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「西アフリカ稲作開発協会」(WARDA)の 研究・普及活動について |

環境資源部 飛田 哲
●WARDA設立の背景と参加国
WARDAは、西アフリカにおける米の需要が高まったことを背景に、1971年UNEP、FAO、ECA(アフリカ経済委員会)の援助のもと、この地域11カ国を加盟国として発足した。当初WARDAはリベリアのモンロビアに本部を置き、アジアをはじめとする稲栽培技術をアフリカに移転することを目的とした普及組織としての色合いが強かったが、さらなる米需要の高揚と、アフリカへの稲作普及が技術移転のみで解決できないアフリカ独自の問題を抱えていたことから、1988年に陸稲研究の拠点であった象牙海岸共和国のブアケ市近郊に本部を移し再出発した。新生WARDAが本格的に活動を開始したのは1990年代に入ってからである。現在の加盟国は、ベナン、ブルキナファソ、カメルーン、チャド、象牙海岸、ガンビア、ガーナ、ギニア、ギニアビサウ、リベリア、マリ、モーリタニア、ニジェール、ナイジェリア、セネガル、シェラレオーネ、トーゴの17カ国である。なおWARDAは、1986年にCGIARのメンバーとなったが、国際農業研究機関としての性格とともに、加盟各国の研究組織との連携を強く保った西アフリカの地域機関としての性格も色濃く持ち続けている。
●WARDAの研究プログラム
WARDAの研究プログラムは、1)天水稲作プログラム、2)灌漑稲作プログラム、3)政策支援プログラム、4)情報ならびに技術移転プログラムの4本柱から成っている。また、遺伝資源保存管理・配布、統計情報処理解析、植物検疫、文書・情報センターなどの研究支援ユニットを持っている。天水稲プログラムは、4つの研究プログラム中で最も多くのスタッフを擁している。これはこのプログラムが対象としている陸稲および天水稲生態系が、西アフリカにおける稲作生態系の8割近くの面積を占めることと無関係ではない。天水稲作で問題となる乾燥、雑草、酸性土壌、いもち病などの収量制限要因の特徴付けと克服法の開発、各種生態系に適応した品種育成が進められている。特にアフリカ稲とアジア稲の交雑育種により育成されたいわゆるNew African Riceは、雑草競合性に優れた低投入適応型品種であり、「アフリカにおける緑の革命」を担う主要な稲品種として注目を集めている。灌漑稲作プログラムは、サヘル地域の灌漑稲作を対象としているため、WARDA本部とは離れたセネガルの北部サンルイ市の郊外にある。灌漑稲作は西アフリカにとってまだ新しい技術であり、面積的には1割強を占めるに過ぎない。このプログラムは、技術の集約化とサヘルの気候・土壌に適応した品種の開発を目指している。また、西アフリカの水田で大きな問題となっているイネ・イエローモットルウイルス病やアフリカタマバエの総合防除法開発や、土壌の塩類集積やアルカリ化防止法・リハビリ法の開発なども行われている。政策支援プログラムでは、西アフリカ各国における米の生産流通政策の比較分析と問題抽出、ならびに問題解決に係わる支援を行っている。またイネ研究の事前および事後インパクトアセスメントの他、マラリアを代表とする水田環境における人間の健康問題もアセスメントの対象としている。情報ならびに技術移転プログラムでは、陸稲および灌漑稲栽培システムの開発と技術移転に係わる農家・普及員・研究者間の組織強化とトレーニングを行っている。未開発ではあるが将来的に稲栽培のポテンシャルが高い内陸小渓谷の開発を目指してコンソーシアム(Inland Valley Consortium)を組織し、この生態系の特徴を様々な面から評価する試みもなされている。

写真:農民参加型稲育種:普及員と農家との対話