ベトナムメコンデルタ在来稲における耐塩性品種選定のための遺伝的多様性の評価

国名
ベトナム
要約

水稲60品種と陸稲5品種を含むメコンデルタ在来稲は、43個のDNAマーカーマイクロサテライトマーカー)を用いたクラスター分析により遺伝的多様性が明らかになり、それらメコンデルタ在来稲61品種から14の耐塩性品種を選抜した。

背景・ねらい

   ベトナムでは高収量品種の導入に伴い在来稲の作付け面積が減少し、在来稲がもつ環境ストレス耐性等の遺伝的多様性の失われることが懸念されている。主要稲作地帯のメコンデルタでは在来種が多く栽培されており、持続的稲作への利用が考えられるがその遺伝的多様性は明らかにされていない。本研究では、DNAマーカー(マイクロサテライトマーカー)を用いてメコンデルタ在来稲の遺伝的多様性を明らかにし、有望な耐塩性品種を選抜した。

成果の内容・特徴

  1. メコンデルタ在来稲とジャポニカ型の日本水稲(4品種)及びインディカ型水稲6品種は、43個のマイクロサテライトマーカー(RMプライマー37個、McCouch et al. 1997及び OSRプライマー6個、Akagi et al. 1996)の多型を用いたクラスター分析により、日本水稲と北部ベトナム起源の陸稲を含むジャポニカ型(グループI)とインディカ型(グループII、III及びIV)に大きく分けられる(図1)。
  2. メコンデルタ在来種は周縁部の水稲がグループIII、中部の在来水稲がIVに含まれることが判明し、ベトナム中・南部起源の陸稲とベトナム以外の典型的インディカ型水稲(グループII)とは異なるが、耐塩性に関して地域特異性は認められない。
  3. 塩を含む水耕液での耐塩性検定(Yoshida et al.1976)の結果、耐塩性のインディカ品種Pokkaliy及び日本稲の日本晴、金南風よりも高度耐性の4品種(Canh nong lun, Nang quoc do, Tamvuot, TD2)、同レベルの耐塩性の10品種(Ba chuc, Ba khieu, Ca dung phen, Nang Thuoc, Nang som ran, Nho do, Phcar Thotnot、Rong Xanh, Tieu rung, Socso)を選抜した。

成果の活用面・留意点

  1. メコンデルタ在来水稲(グループIII及びIV)には相似係数の大小はあるが多様な遺伝的変異が内在されており、インディカ型稲の変異を拡大するための品種改良に利用できる。
  2. メコンデルタ在来稲から選抜した耐塩性の14品種は、耐塩性育種素材として品種改良に活用できる。

具体的データ

  1.  

    図1 43個のマイクロサテライトマーカー多型を用いた完全連結法によるベトナムメコンデルタ在来稲の遺伝的変異
Affiliation

国際農研 生物資源部

分類

研究

予算区分
国際農林水産業招へい共同研究(1997 JIRCASフェローシップ)
研究課題

メコンデルタ在来稲の遺伝学的研究

研究期間

平成11年(平成10~11年)

研究担当者

智広 ( 生物資源部 )

TUAN Vuong Dinh ( クーロンデルタ稲研究所 )

ほか
発表論文等

Tuan, V. D and 坂智広 (1999) マイクロサテライトマーカーを用いたベトナム在来イネの遺伝的多様性の分析. 育種学研究, 第1巻(別2).

日本語PDF

1999_02_A3_ja.pdf782.33 KB

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