セジロウンカに対する中国ジャポニカ水稲‘春江-06’の品種抵抗性
中国ジャポニカ水稲‘春江-06’の高度なセジロウンカ抵抗性は、優性の吸汁抑制形質と、劣性の殺卵誘導形質の複合作用によって発現し、両抵抗性形質は、それぞれ中間母本‘秀水04’および‘祥湖24’、‘C81-40’に由来する。
背景・ねらい
中国の多収性ハイブリッド水稲は米増産に貢献しているが、一方で水稲害虫を多発生させる重大な原因にもなっている。ハイブリッド水稲地帯で多発するイネウンカ類は、ジャポニカ水稲地帯にも飛来侵入し、重要な要防除害虫になっている。その結果、慣行化した殺虫剤散布は水稲害虫の殺虫剤抵抗性を発達させ、水田生態系への負荷の増大が持続的で安定した米の生産基盤を脅かしている。殺虫剤に過度に依存した現行の害虫管理を改善し、水田生態系と調和した総合管理技術を開発するために、中国水稲品種中に既存する虫害抵抗性を再評価し、その実用化を促す試験研究が求められている。
成果の内容・特徴
中国水稲‘春江-06’は、高収量、高品質、病害抵抗性晩生ジャポニカ型品種として、1994年に中国水稲研究所で育成され、日中共同研究によって、高度なセジロウンカ抵抗性を有する事実が明らかにされた。
- 春江-06のセジロウンカ抵抗性は、吸汁抑制に起因する非寄生性と卵巣発育の抑制、およびウンカの産下卵に対する誘導殺卵作用によって発現する(図1)。
- セジロウンカに対する春江-06の吸汁抑制と殺卵作用の遺伝様式は、それぞれ独立した優性2遺伝子と劣性1遺伝子の関与を示唆している(表1)。
- 春江-06の吸汁抑制抵抗性は、主として中間母本‘秀水04’に、殺卵抵抗性は‘祥湖24’と‘C81-40’に由来する。
- 中国ジャポニカ水稲の約10%の品種が吸汁抑制型抵抗性を、30%が殺卵型抵抗性を持っているが、春江-06を除いて、両抵抗性形質を兼備する品種は見い出されていない。
成果の活用面・留意点
春江-06は実用的なセジロウンカ抵抗性ジャポニカ品種の初めての品種例であり、その抵抗性の機作、遺伝、家系に関する研究結果は、セジロウンカ抵抗性ジャポニカ品種を育種する際の貴重な基礎的知見となる。
具体的データ
- Affiliation
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国際農研 生産利用部
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中国水稲研究所
- 分類
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研究
- 予算区分
- 国際農業〔中国食料資源〕
- 研究課題
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中国における移動性イネウンカ類の総合管理技術の開発
- 研究期間
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平成12年度 (9~13年度)
- 研究担当者
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寒川 一成 ( 生産利用部 )
- ほか
- 発表論文等
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寒川一成ら (1999) 中国産ジャポニカ水稲「春江-06」のセジロウンカ抵抗性機作. 九病虫研会報, 45: 45-53.
寒川一成ら (2000) 中国稲「春江-06」のセジロウンカ抵抗性の遺伝様式と中国ジャポニカ稲における同抵抗性形質の分布. 九病虫研会報, 46: 70-73.
寒川一成 (2000) 中国ジャポニカ水稲のセジロウンカ抵抗性. 植物防疫, 54: 238-241.
- 日本語PDF
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