地中点滴装置を用いたかん水施肥によるハクサイ心腐れ症の軽減

要約

地中点滴装置を用いて、窒素施肥量を低減したかん水施肥を行うことにより、ハクサイの結球重量は慣行施肥栽培と同等であるが、心腐れ症を軽減することができる。軽減の程度には品種間差異が認められ、耐性の1品種についてはほぼ完全に克服できる。

背景・ねらい

   アジア野菜研究開発センター(AVRDC)において、ハクサイの耐暑性品種が育成され、東南アジア各国で栽培面積が増大しつつある。しかしながら、熱帯・亜熱帯の高温多湿な地域では、心腐れ症等の生理障害が大きな問題になっている。本研究では、亜熱帯の圃場条件下で、ハクサイ心腐れ症の発生条件と軽減対策を明らかにする。

成果の内容・特徴

  1. ハクサイの秋植え栽培(11月中旬定植、1月下旬収穫)における期間中の平均気温は19~23°Cの範囲にあった。期間中の降水量は558mmで、全かん水量を9mmとした結果、土壌の体積水分率は0.1~0.3 m3m-3の範囲にあった。
  2. CDU入り化成肥料を用いた慣行施肥区(25gN m-2)と、窒素施肥量を低減(5gN m-2)したかん水施肥区の間で、結球重量に有意差は認められない(表1)。結球重量には品種間差異が認められ、無双(2.06kg)>大福(1.87kg)>優黄(1.72kg)>大福60(1.59kg)=新あづま山東(1.51kg)の順に大きい。
  3. 施肥法、品種、施肥法×品種交互作用の変動因別に、それぞれ0.1%、0.1%、1% 水準で心腐れ症発生率に有意差が認められる(表1)。心腐れ症軽減の程度には品種間差異が認められ、耐性の1品種(優黄)については、かん水施肥により心腐れ症をほぼ完全に克服できる(表2)。
  4. 心腐れ症感受性品種(無双)と耐性品種(優黄)の間で、また慣行施肥区とかん水施肥区の間で、外葉と内葉のカルシウム含量はほぼ等しく(図1.A)、全窒素含量は大きく異なる(図1.B)。その結果、かん水施肥により内葉のCa/TN比が高まる(図1.C)。
  5. 通常、ハクサイ心腐れ症はカルシウム欠乏症と診断されるが、石灰質肥料を施用した土壌、石灰岩を母材とするアルカリ性土壌においても発生する。本研究の結果からは、窒素過多が主な原因と考えられる。

成果の活用面・留意点

   活用事例:AVRDC育成の耐暑性ハクサイ5品種を用いた春植え栽培(3月中旬定植、5月中旬収穫)において、窒素施肥量を低減したかん水施肥を行うことにより、結球重量は慣行施肥栽培と同等以上であるが、心腐れ症を大幅に軽減することができる。

具体的データ

  1. 表1
  2. 表2
  3. 図1
Affiliation

国際農研 沖縄支所

分類

研究

予算区分
経常 国際農業〔効率的環境管理技術〕
研究課題

亜熱帯におけるハクサイ心腐れ症の発生機構の解明

研究期間

平成12年度(8~12年度)

研究担当者

菅原 和夫 ( 沖縄支所 )

増田 泰三 ( 沖縄支所 )

HERNANDEZ Lauro G. ( 沖縄支所 )

坂西 研二 ( 沖縄支所 )

大脇 良成 ( 沖縄支所 )

ほか
発表論文等

地中点滴施肥によるハクサイ心腐れ症の軽減. 日本土壌肥料学会講演要旨集, 第45集, 1999.

日本語PDF

2000_25_A3_ja.pdf961.56 KB

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