オイルパーム空果房からの高純度セルロースパルプの調製
オイルパーム空果房に対して環境負荷の少ない方法でパルプ化・漂白を行ない,既存の工業製品に近い性質を有する高純度セルロースパルプを調製し,熱帯産未利用木質資源からファインケミカルズ原料を製造することができる。
背景・ねらい
オイルパーム木質部分のひとつ空果房(Empty Fruit Bunches:EFB)(図1)は、貴重な熱帯産未利用リグノセルロース資源であるにも拘わらず、パーム油産出の際に大量に廃棄されている。現在のEFB のパルプ化は製紙用パルプが主である。高純度セルロースパルプ(溶解パルプ)は、食品、医薬品、フィルム、繊維等の素材となるセルロース誘導体の出発物質であり、製紙用パルプの5 ~ 10%の需要にすぎないが、現在の工業原料として欠かせないものである。EFB からの溶解パルプ調製の研究はまだ試みられていない。そこで、EFB を原料に、特に環境負荷の小さいパルプ化・漂白方法を施し、溶解パルプの調製を試みる。
成果の内容・特徴
- EFB からソーダ・アントラキノン蒸解(活性アルカリ量24%/アントラキノン0.1%、170oC / 90 分)ならびにオゾン漂白(対パルプ0.4 ~ 1.5%)により溶解パルプを調製できる。蒸解では水質汚濁の原因となるイオウ成分を含まず、漂白ではダイオキシン発生が危惧される塩素を含まない。
- 蒸解前処理で酸加水分解を行い、漂白後処理でアルカリ抽出を施してパルプ調製を行うと、高α- セルロース含量、低灰分率および低ペントザン(ヘミセルロースの一部)含量のパルプとなる(表1)。
- 酸加水分解前処理により、これらの諸物性は格段に向上し(表中A とB の比較)、アルカリ抽出により(C)、少量のオゾン使用でも充分に条件を満たすことができる。これらの数値は市販溶解パルプに匹敵するものであり、また、JIS 規格基準値にも適合する。
- 水のみでEFB の加水分解処理を施すと、α- セルロース含量等が格段に改善され(表2)、薬剤使用量を軽減できる。従ってEFB の水前処理でも質の良い溶解パルプが調製しうる。
成果の活用面・留意点
熱帯産未利用リグノセルロース資源を大量に抱える熱帯諸国において、原料からフィルム、繊維、食品添加剤など工業製品を製造する一貫した生産システムを構築する基礎となる。
具体的データ
- Affiliation
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国際農研 林業部
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マレーシア理科大学
- 分類
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研究
- 予算区分
- 経常 基盤
- 研究課題
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熱帯産未利用木質資源の有効利用のための技術開発
- 研究期間
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2001 年度(1998 ~ 2001 年度)
- 研究担当者
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田中 良平 ( 林業部 )
WAN Rosli Wan DauD ( マレーシア理科大学 )
- ほか
- 発表論文等
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Tanaka R. and Wan Rosli W.D. (2000): Preliminary studies on preparation of dissolving pulp from oil palm empty fruit bunches. Proceedings of 5th Pacific Rim Bio-Based Composites Symposium, The Australian National University, p. 499-502.
- 日本語PDF
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- English PDF
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