コムギのAFLP マーカーを効率的にSTS 化するためのExtension-AFLP法

要約

AFLP マーカーの選抜プライマーに塩基を付加した4種の3次選抜プライマーを用いてnestedPCR を行うExtension-AFLP 法は、多型を示すターゲットDNA 断片を効率的に選抜する方法である。これにより、コムギAFLP マーカーを効率的にSTS 化できる。

背景・ねらい

   AFLP(増幅断片長多型)マーカーをSTS(Sequence Tagged Site)化してゲノムDNAからその特定配列をPCRで増幅できるSTSマーカーに移行するには、AFLPのターゲットバンドをサブクローニングして塩基配列を特定しPCRプライマーをデザインする。ゲノムサイズの大きいコムギでは、AFLPのターゲットバンドに複数のゲノム領域のコピーが含まれるため、複数シークエンスからターゲット領域の配列を選び出すのが困難である。またSTS化の過程でデザインしたプライマーを用いても、ターゲットの断片長多型を消失してしまうなどSTS 化が非常に困難である。そのため、コムギのAFLPマーカーを効率的にSTS化するExtension-AFLP法を開発した。

成果の内容・特徴

  1. Extension-AFLP法は、AFLPマーカーの選抜プライマー(selective primer)にA,T,G,Cの塩基をそれぞれ付加した4種の3次選抜プライマーを用いてnested PCRを行う。その中から多型を示すターゲットDNA断片を増幅する選抜性の高いプライマーを選び、この操作を繰り返すことでゲノムからターゲット領域の配列を効率的に選抜する方法である。
  2. AFLPマーカーをサブクローニングする際のターゲットクローンの割合(E-ACT/M-CGAC118-120が15.6%、E-AAC/M-CGAC285は37.5%)が、3回のExtension-AFLP操作により単一のターゲット領域の配列を選択的に選び出すことが可能で(93.8%及び87.5%)、後は従来通りシークエンスおよびPCRプライマーデザインすることで、従来法よりも効率的にSTS マーカーを開発できる(図1)
  3. Extension-AFLP法により、コムギの赤かび病抵抗性QTLに大きく寄与する3 BS染色体の2つのAFLPマーカーがSTS化(STS-118-120、STS285)でき、ターゲット領域の配列の増幅と多型が検出できる(図2,3)
  4. AFLP マーカーが優性マーカーの場合PCRの失敗によるバンドの欠失の見分けが困難であるが、同時に第3のプライマーを用いて共通の増幅断片を得ることで優性マーカーでも分離が確認できる(図3)

成果の活用面・留意点

  1. Extension-AFLPによる効率的なSTS化法は、コムギ以外の場合にも適用できる。
  2. AFLPの際の制限酵素認識サイトに欠失がある場合は、Extension-AFLP法でもSTS化が困難な場合がある。

具体的データ

  1. 図1
  2. 図2
  3. 図3
Affiliation

国際農研 生物資源部

分類

研究

予算区分
基盤〔育種法〕 重点支援研究協力員
研究課題

開発途上地域における主要作物の不良環境耐性改良のための育種法の開発研究

研究期間

2003 年度(2001 ~ 2005 年度)

研究担当者

智広 ( 生物資源部 )

東河 ( 生物資源部 )

ほか
発表論文等

許東河, 坂智広 (2003) : コムギにおける赤かび病抵抗性に関連するSTSマーカーの開発. 育種学研究, 5(別2), p.106.

D.H. Xu and T. Ban (2003): Conversion of AFLP markers associated with FHB resistance in wheat into STS markers with an extension-AFLP method. Genome (in press).

日本語PDF

2003_05_A3_ja.pdf2.67 MB

English PDF

2003_05_A4_en.pdf77.08 KB

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