マンゴーおよびその近縁種の遺伝的多様性と類縁関係

要約

DNA マーカーにより、Mangifera 属マンゴーおよびその近縁種の遺伝的多様性ならびにそれらの類縁関係を明らかにできる。また同じ手法によってMangifera 属における高精度の品種識別が可能である。

背景・ねらい

   マレー半島、ボルネオ島、スマトラ島などを中心とした東南アジアから南アジアに多く分布するMangifera 属のマンゴーおよびその近縁種は、この地域の重要な商用作物であり、それらの遺伝資源活用と新品種育成が求められている。しかしながら、これまでの形態形質に基づくMangifera属の種・品種の分類では類縁関係を正しく把握できなかったため、その遺伝的多様性に関する基礎情報が整備されていない。そこで、Amplified Fragment Length Polymorphism(AFLP)法を利用したDNA マーカー情報によってMangifera 属の遺伝的多様性について調べ、品種群を分類するとともに、その類縁関係を明らかにする。

成果の内容・特徴

  1. 東南アジアと南アジア原産のMangifera 属35品種は、8プライマー組合せを用いたAFLP分析(図1)により、基本的に従来の分類学上のMangifera 属の4 つの種、M. caesia Jack、M. foetida Lour.、M. odorata Griff. およびM. indica L. に分類できる(図2 )。
  2. M. odorata Griff. 種内の遺伝的多様性は他の3種と比較して極端に低く、またこの種の7品種は279のAFLPバンドについて全て同一型を示す。
  3. M. caesia Jack は他の3種と遺伝的に遠縁である。
  4. M. indica L. の在来品種Mi3 は、M. indica L. の他の品種と遺伝的に遠縁であり、むしろM.odorata Griff. に近縁である。
  5. M. caesia Jack の在来品種Mc5 は、M. caesia Jack に分類されているが、他の5 品種とは遠縁である。
  6. Mangifere 属の4 種35 品種について、極めて近縁なM. odorata Griff. の7 品種を除くと、AFLP 分析によって迅速かつ高精度の品種識別が可能である。

成果の活用面・留意点

   更に多くのMangifera 属の遺伝資源を用いてAFLP 法による遺伝的多様性やそれらの類縁関係について網羅的に解析する必要がある。

具体的データ

  1.  

    図1
  2.  

    図2
Affiliation

国際農研 生物資源部

分類

研究

予算区分
委託プロ〔アジアバイテク〕
研究課題

マンゴー遺伝資源評価のためのDNA マーカーの開発

研究期間

2002 年度

研究担当者

山中 直樹 ( 生物資源部 )

HASRAN Masrom ( マレーシア農業研究開発研究所 )

常松 浩史 ( 生物資源部 )

智広 ( 生物資源部 )

ほか
発表論文等

Masrom Hasran, Yamanaka, N., D. H. Xu, Tsunematsu, H. and T. Ban (2003): Genetic relationship of Mangifera accessions revealed by AFLP analysis. 育種学研究, 第5巻別冊1号, 222 頁.

山中直樹, Masrom Hasran, 許東河, 常松浩史, Salma, 坂智広: Mangifera 属の類縁関係とその遺伝的多様性. (投稿準備中)

日本語PDF

2003_07_A3_ja.pdf2.33 MB

English PDF

2003_07_A4_en.pdf78.83 KB

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