水稲の耐倒伏性関連形質のQTL 解析
インディカ・ジャポニカ交配後代の半数体倍加(DH)系統の押し倒し抵抗値、地上部形態形質、根系形態形質など耐倒伏性に関係する形質の量的形質遺伝子座(QTL)はそれぞれ複数の染色体上に散在し、押し倒し抵抗値ではQTLは第7,8染色体上に存在する。
背景・ねらい
インディカとジャポニカが交互に作付けされる中国江南地方の二期作において、倒伏はこぼれ種によって次作に重大な影響を与える。さらに近年では、産業構造の変化によって直播栽培が急速に広まっており、ころび型倒伏の発生が問題となっている。このため、地上部形質のみならず根系も含めて耐倒伏性の機作を解明し、耐倒伏性品種を育成することが求められている。そこで、インディカ・ジャポニカ交配(窄葉青8号/ 京系17)後代のDH系統(供試系統数127)を用いて、押し倒し抵抗値や根系形態など耐倒伏性に関連する形質のQTL解析を行う。
成果の内容・特徴
- 倒伏程度との相関は、稈長、重心高、地上部重、地上部モーメントの地上部形質、次いで地上部重で除した押し倒し抵抗値、TR 率が強く、根系形態及び根活性は弱い。押し倒し抵抗値との相関は到穂日数>地上部形質>根系形質の順に強い。(表1 )
- 倒伏程度のQTL は第2,6染色体上にあり、第6染色体上のQTLはTR率のQTLの一つと同じ位置である(表2、図1)
- 稈長のQTLは第4,8,10,12染色体、重心高のQTLは第4,8,9,10染色体上にあり、第4,8,10染色体上のQTLは両者が同じ位置である。他の形質(根系形態、根活性、押し倒し抵抗値、倒伏指数、到穂日数、地上部形態)も各々複数のQTL が複数の染色体上に散在する。(表2、図1 )
- これらのQTLを、各形質と倒伏程度との相関係数の正負号と各QTLのAdditive Effectの正負号により、耐倒伏性を増加させるQTLと減少させるQTLに分類すると、ゲノム上で分布が鮮明に分かれる。増加させるQTLは第3,5,6,7染色体上、減少させるQTLは第1,2,4,8,9,10,12染色体上に偏在する。(図1)
成果の活用面・留意点
- 得られた情報に基づき、耐倒伏性を増減させる領域を置き換えた材料を開発することにより、その効果の研究に活用できる。
- 1つの集団での成果であり、他集団での反復が望まれる。
- 稈長が耐倒伏性に与える影響は大きいので、稈長をそろえた材料を開発し、更に解析を進める必要がある。
具体的データ
-
表1 倒伏程度及び押し倒し抵抗値と各形質の相関関係
-
表2 各形質のQTL (2003)
-
- Affiliation
-
国際農研 生産環境部
- 分類
-
研究
- 予算区分
- 国際プロ〔中国食料資源〕
- 研究課題
-
多収関与要因の解析と安定多収栽培技術の開発
- 研究期間
-
2003 年度(2002 ~ 2003 年度)
- 研究担当者
-
藤本 寛 ( 生産環境部 )
飛田 哲 ( 生産環境部 )
銭 前 ( 中国水稲研究所 )
呉 偉明 ( 中国水稲研究所 )
曾 大力 ( 中国水稲研究所 )
董 国軍 ( 中国水稲研究所 )
郭 龍彪 ( 中国水稲研究所 )
- ほか
- 発表論文等
-
Fujimoto, H. (2003): QTL mapping for lodging-resistance traits using a DH population. Workshop on Rice Germplasm Innovation Using Biotechnology. 口頭発表
Fujimoto, H. and Q. Qian (2003): QTL mapping for lodging-resistance traits using a DH population. The First International Symposium on Rice Functional Genomics Abstracts, p.49. ポスター発表
Fujimoto, H., J. Hu, Q. Qian, G. Dong, S. Teng, D. Zeng and L. Zhu (2002): QTL analysis of lodging resistance in rice (Oryza sativa L.). International Rice Congress 2002. ポスター発表
- 日本語PDF
-
2003_12_A3_ja.pdf2.55 MB
- English PDF
-
2003_12_A4_en.pdf64.86 KB