生しぼり豆乳を2段階で加熱すると豆腐の粘弾特性、保水性、歩留まりが向上する
豆腐ゲルの形成に関与する大豆タンパク質の変性温度に着目し、生しぼり豆乳を70°C10分→100°C5分の二段階で加熱すると、凝固剤を添加して調製される豆腐の粘弾特性、保水性、歩留まりが向上する。
背景・ねらい
豆腐は中国や日本などの東アジア地域を中心に大衆化された伝統的大豆加工食品であるが、加工適性の高い大豆を安定的に確保することが困難な場合が多く、一定レベル以上の豆腐品質を確保できるような加工技術の開発が望まれている。
一般に豆腐は、98~105°Cで2~5分の一段階で加熱した豆乳に、凝固剤を加えて調製される。豆腐ゲルの形成には、大豆の主要なタンパク質である、グリシニン(11S、変性温度92°C、ジスルフィド結合多い)とβ-コングリシニン(7S、変性温度71°C、ジスルフィド結合少ない)が関与しており、ジスルフィド結合の再配列による分子間架橋構造の形成の他に、非共有結合性のタンパク質分子間の相互作用が、豆腐ゲルの粘弾特性に重要な役割を果たしている。本研究では、これら性質の異なるタンパク質が異なる温度で加熱変性することに着目し、大豆タンパク質の段階的な加熱変性が豆腐ゲルの形成に及ぼす効果について検討した。
成果の内容・特徴
- 精密な温度コントロールに基づく段階的な加熱を可能とするため、通電加熱装置を用いた内部加熱法を適用した。
- 生しぼり豆乳を70°C10分→100°C5分の二段階で加熱し、グルコノデルタラクトンを凝固剤に充填豆腐を調製すると、100°C5分の一段階で加熱した豆乳を用いて調製された豆腐と比較して、ヤング率が有意に上昇するとともに離水率が低下する(P<0.05)。すなわち、崩れにくくなり保水性も向上する(表1)。
- 段階的な加熱処理により、タンパク質が一斉に加熱変性する一段階加熱と比較して、より緻密できめの細かい豆腐ゲルを形成する(図)。
- 異なる大豆品種や脱脂大豆を用いた場合も同様の効果がある。
- 二段階加熱豆乳を用いて木綿豆腐やソフト豆腐を調製すると、豆腐の粘弾特性が向上するだけでなく(表2)、歩留まりも有意に(P<0.05)高くなる(表3)。
- 凝固剤として硫酸カルシウムや塩化マグネシウム(にがり)を用いた場合も同様の効果がある。
成果の活用面・留意点
- 通電加熱装置の代わりに、湯煎等の外部加熱を用いても同様の結果が得られるが、豆乳の粘度上昇を低く抑えるために、温度制御に注意する必要がある。
- 保水性が高く、崩れにくい豆腐が加工できるため、生食用、炒め物用等の用途別豆腐の開発が期待できる。
- 食味であるがゲル形成能の低い大豆にも有効であり、国産大豆の利用拡大も期待できる。
具体的データ
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表1 グルコノデルタラクトン充填豆腐の物理特性
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表2 ソフト豆腐**の物理特性
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表3 ソフト豆腐**の歩留まり
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(上:一段階加熱豆乳、下:二段階加熱豆乳)
- Affiliation
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国際農研 利用加工領域
- 分類
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研究
- 予算区分
- 交付金〔高付加価値化〕
- 研究課題
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アジア農産物の高付加価値化
- 研究期間
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2007年度(2006~2011年度)
- 研究担当者
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辰巳 英三 ( 利用加工領域 )
門間 美千子 ( 食品総合研究所 )
汪 立君 ( 中国農業大学 )
李 里特 ( 中国農業大学 )
- ほか
- 発表論文等
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Wang, L., Li, D., Tatsumi, E., Liu, Z., Chen, X., and Li, L. (2007): Application of two-stage ohmic heating on tohu processing. Chemical Engineering and Processing 46(5): 486-490
- 日本語PDF
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2007_seikajouhou_A4_ja_Part14.pdf661.05 KB