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国際農林水産業研究成果情報 第1号 【1993(平成5年度)】

中国・亜熱帯地域に適する多収・高品質夏キュウリ品種の育成

〔 要約 〕中国・亜熱帯地域の夏野菜の不足を解消するために、当地域に適する多収・高品質 キュウリ品種の育種を行い、既存の「夏青2号」よりも耐暑性・耐病性に優れ多収で品質の良い「雑交1号」、「雑交2号」及び「雑交3号」の3つの優良F1系統を育成した。
所属 国際農林水産業研究センター生物資源部・広東省農業科学院 連絡先 0298-38-6305
推進会
議 名
国際農業 専門 育種 対象 果菜類 分類 1

[ 背景・ねらい]

亜熱帯に属する中国・広東省では夏野菜が恒常的に不足している。重要な夏野菜の1つであるキュウリの主要品種「夏青2号」は収量が低く、苦味果が発生するなどの欠点があり、改良が必要である。そこで、この地域の夏キュウリの生産安定を図るために、「夏青2号」よりも多収で高品質のキュウリ品種の育成を図った。


[成果の概要・特徴]
  1. 華南型品種は耐暑性、耐病性、草勢は強いが、収量が低く、品質が劣った。日本品種は華南型と華北型の中間型に属し、果実が細長くて品質が良い特長を持つが、耐暑性、耐病性が劣る欠点がある。台湾品種は華南型に属して耐暑性、耐病性が強い上に、比較的品質が良いために、広東地域のキュウリの育種素材として適していると考えられた(表1)。
  2. 雑種強勢を利用したF1品種の採種省力化のために、種子親には雄花のない雌性系統が必要であった。そこで、耐暑性、耐病性が強く、雌花率が高いF1品種の「夏青2号」に自殖と選抜を繰り返した結果、F9世代目で雌花率が90%以上の雌性系統を得ることができたので、これを「GE」と命名した。
  3. 「GE」を種子親にして、優良な台湾、日本、中国品種及びそれらから育成した自殖系統を花粉親にして交配組合せ試験を行い、「雑交1号」(写真1)、「雑交2号」(写真2)及び「雑交3号」(写真3)の3つの優良F1系統を育成した。これらのF1系統は、いずれも対照品種の「夏青2号」に比べて株当り着果数が多くて収量が高く、苦味果の発生が少ない。また、一果重は大きくて果長がやや長い特長を持ち、耐病性は「夏青2号」と同程度に強い。「雑交1号」及び「雑交2号」は「夏青2号」よりも第一雌花着生節位が低く早生である(表2)。地域適応性検定試験の結果、新系統は「夏青2号」に比べて収量が平均30〜40%程度高かった。

[成果の活用面・留意点]

育成したF1系統は華南地方の夏キュウリ品種として有望であり、普及が期待される。


[具体的データ]
表1 華南、日本及び台湾キュウリ品種の特性の比較
品 種 由来 草勢 耐暑性 長さ(cm) 太さ(cm) 品質 モザイク病 べと病 疫病 調査年次
夏青2号 華南 や強 20-23 4.5-5.0 や強 - 1989
夏秋青 華南 20-23 5.0 や強 1989
れんせい 日本 23 4.5-5.0 や強 - 1988
光風抑制3号 日本 23 4.5 - 1988
光風3号 日本 23 4.5 や弱 - や強 1989
つばさ 日本 23 4.5 や弱 - 1989
南進 日本 23 4.5 や弱 - 1989
緑宝 台湾 や強 や強 20-23 5.0 - 1898
鳳燕 台湾 や強 や強 20-23 4.5-5.0 - や強 1989
表2 3つの新F1系統の特性(1991年)
系統・
品種名
組合せ 第一雌花
着生節位(節)
株当り
結果数
一果重
(g)
果長さ
(cm)
太さ
(cm)
実肉厚
(cm)
苦味
果率 (%)
前期
収量 (kg/a)
総収量
(kg/a)
べと病 炭そ病
雑交1号 GE×鳳燕 5.3 3.3 204 21.4 3.9 2.4 5.0 173.7 426.4 や強 や強
雑交2号 GE×緑宝 4.6 2.9 219 19.5 4.1 2.4 15.0 132.7 335.2 や強 や強
雑交3号 GE×光風3号F6 12.2 2.5 219 20.4 3.9 2.2 10.0 130.2 321.0 や強 や強
夏青2号 (対照品種) 11.7 1.7 188 16.9 3.9 2.2 30.0 103.9 251.7 や強 や強

写真1-3


[その他]
研究課題: 中国における野菜のストレス耐性の改善
予算区分: 熱研プロ(中国野菜)
研究期間: 平成5年度(昭和62年〜平成3年)
研究担当者: 森下昌三・藤野雅文・飛騨健一・中島武彦・羅少波・周微波・李智軍・羅戦勇
発表論文等: 耐熱蔬菜研究論文集,1−11,1992
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