TOP >アーカイブス(刊行物:国際農林水産業研究成果情報第1号)

国際農林水産業研究成果情報 第1号 【1993(平成5年度)】

乾燥地土壌の生成機構と特性の解明

〔 要約 〕トルファン乾燥地土壌は一般に生成初期段階にある。有機物含量は低く,陽イオンが多いことが特徴である。土壌生成には地形が強く関与している。乾燥気候のため土壌中に水は上方に移動し,表面に塩類を集積する。とくに地下水位の高いところでは容易に塩類が集積する。
〔 キーワード 〕乾燥地土壌,土壌生成,土壌特性,粘土鉱物
所属 国際農林水産業研究センター 連絡先 0298-38-6306 中国科学院新疆生物土壌砂漠研究所
推進会
議 名
国際農業・総合農業・農業環境「 専門 土壌肥料 対象   分類  

[ 背景・ねらい]

地球上の乾燥地帯は全陸地の1/3を占める。その自然条件は,乾燥,少雨,強風,夏季の高温と冬季の低温など非常に厳しい。また,人口増加の圧力は過開発,過放牧などによる砂漠化,土壌の塩類化を引き起す危険性を高めている。このような地域における持続的農業開発の基礎的知見を得るため,農業生産の基盤である土壌の生成機構と特性を明らかにする。


[成果の概要・特徴]

中央アジアの乾燥地域に属する中国新疆地区は,河川が盆地内で消失する閉鎖系の大小の盆 地からなる。その典型であるトルファン地区の土壌調査を行い以下の成果を得た。

地形は,山地から盆地中央部(最低地)に向かって,洪積成扇状地―干涸三角州―沖積平原 ―湖となっている。それに応じて土壌は,褐色砂漠土―灌漑耕作土―灌漑沖積土―水成土―塩 類土―塩泥と変化する。断面発達は弱いものが多く,土壌生成過程は初期段階にあるといえる。 扇端付近から沖積地が主な農業地帯で,人為土壌が広がる。

土壌の反応は多くはpH8〜9と高く,水溶性と交換性の塩基含量は50〜200 me/100gと高く,有 機物含量は供給量が低く分解が速いため表層でも1 %強と低い。無機植物養分は十分あるといえ るが,通常は多すぎて扇端付近や沖積平原には塩類土が生成している。

塩類土は,極端な乾燥のため土壌水分が上方に移動蒸発し,土壌表面に塩分を残したもので, 地下水位が4〜6 mより浅いと塩類化を起こす。可溶性塩の主体は,塩化ナトリウムであるが,一 部には微生物活動による硝酸塩地帯もある。

土性は扇頭では石礫からなるが低地ほど細粒質になり,緻密で堅硬な土壌が多い。土壌構造 の発達は弱く,粘土の移動集積は断面調査では認められなかった。

一次鉱物は石英と長石を主とするが,重鉱物も含まれている。粘土鉱物はスメクタイトを中心 とした可風化性鉱物を多く含んでおり,潜在肥沃度は高いといえる。

以上のように,トルファン地区の土壌は風化生成の初期段階にあって潜在肥沃度が高く,水な どの他の条件が整えば良好な農耕地となる可能性がある。ただし,塩類化や風食などの阻害要因 も多く,総合的な対策が必要である。


[成果の活用面・留意点]

乾燥地の土壌は植物養分含量が高いが,これは乾燥地特有の土壌水分が上方に移動するという特性の裏返しであり,土壌の塩類化の危険は常にある。これは不用意な灌漑排水によっても起こる。従って,塩類化の程度と危険性を常に考慮する必要がある。


[具体的データ]


[その他]
研究課題: 乾燥地の水動態・土壌特性の解明
予算区分: 環境資源
研究期間: 平成5年度(昭和63年〜平成4年)
研究担当者: 中井 信,趙貴海
発表論文等: 中井 信 (1991) 中国の砂漠問題,―タクラマカン砂漠―,地球環境と農林業,養賢堂,pp.171-192 中井 信・趙貴海 (1993) トルファン地区土壌の粘土鉱物特性中共同研究成果発表報告会論文集,熱研,p.70-77 M. Nakai and Zhao Guihai (1993) Clay Mineralogy of Soils from Turfan,Proceedings of the International Workshop on Classification and Management of Arid-Desert Soils, pp.116-119 中井 信 (1993) 中国の乾燥地土壌と塩類化対策,砂漠緑化の最前線,新日本出版,pp.83-110
前のページ

次のページ