アズキ亜属4倍体種Vigna glabrescensの遺伝的背景
リョクトウの主要病害虫に抵抗性を示すアズキ亜属4倍体栽培種のVigna glabrescens は、4倍体野生種 V.reflexo-pilosa の栽培型であり、2倍体野生種の V.trinervia (雌親)と V.minima (花粉親)がこれら4倍体種の両親種であると推定された。
背景・ねらい
東南アジアで進められているリョクトウの育種に、アズキ亜属内の近縁種を有効に利用するためには、それらのもつ遺伝的多様性、種間の類縁関係を明らかにする必要がある。4倍体種 Vigna glabrescens はリョクトウの主要病害虫に抵抗性を示すが、2倍体であるリョクトウとの雑種は完全不稔となり後代が得られない。このため、V. glablescens のゲノム構成を2倍体レベルで明らかにすることによって、リョクトウ育種のための遺伝子給源を拡大する。
成果の内容・特徴
- マレー半島でアジア産ササゲ属野生種の探索を行い、2倍体種 Vigna trinervia(70点)及び V. minima(1点)、4倍体種 V. reflexo-pilosa(16点)を収集した。これらの野生種及びこれまでに収集した近縁種の発芽種子抽出物を用いて電気泳動を行い、アイソザイムのバンドパターンから、V. trinervia と V. minimaは、異質4倍体 V. glabrecens 及び V. reflexo-pilosa の両親種である可能性が高いことを明らかにした(図1)。
- V. reflexo-pilosa、V. glabrescens 両種間の正逆交雑により、発芽力のある雑種種子が容易に得られた(表1)こと、また、この両種が形態的にもよく類似していることから、V. glabrescens は野生種 V. reflexo-pilosa の栽培型であると推定した。
- V. trinervia とV. minima の交雑は、V. trinervia を雌親とした場合にのみ成功した。着莢率は3.5%と低かったが、発芽力のある種子が得られた(表1)。このことから、4倍体種の成立に関して、V. trinervia は雌親として関与したと考えられる。
以上の結果からアズキ亜属4倍体種の系統分化を図2のように推定した。
成果の活用面・留意点
収集した2倍体野生種 V. trinervia は、遺伝的な変異に富むとともに、リョクトウの野生型 V. radiata var. sublobata との交雑でも発芽力のある雑種種子が得られることから、リョクトウ育種の遺伝子給源として有望と考えられる。
具体的データ
- Affiliation
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国際農研 生物資源部
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タイ農業局チャイナート畑作物研究センター
- 分類
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研究
- 予算区分
- 経常
- 研究課題
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東南アジアに分布するアズキ近縁野生種の遺伝的多様性
- 研究期間
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1994年度(1992~1995年度)
- 研究担当者
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江川 宜伸 ( 生物資源部 )
CHOTECHUEM Somsong ( タイ農業局チャイナート畑作物研究センター )
KITBAMROONG Charas ( タイ農業局チャイナート畑作物研究センター )
- ほか
- 発表論文等
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Egawa, Y., et. al. (1994) Phylogenetic differentiation of Vigna species in Asia, JIRCAS International Symposium Series, 2, 112-120.
- 日本語PDF
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1994_02_A3_ja.pdf1.02 MB