アフリカ飼養牛の環境適応性と生産性の両遺伝能力を同時に推定する手法

国名
アフリカ
要約

アフリカ飼養牛のトリパノゾーマ及び暑熱等に対する環境適応性の指標として牛群滞在日数をとりあげ、さらに乳等の生産性の遺伝能力を同時に推定する手法を開発した。

背景・ねらい

アフリカ熱帯地域の牛は、自然淘汰の中でトリパノゾーマ症はじめ多くの疾病や低栄養環境下でも生存しうる能力を獲得してきた。一方、爆発する飢餓、人口増加を吸収するにはアフリカ牛の生存能力以外にも乳、肉、労役等の生産性を高める育種改良が必要である。これまで、アフリカ牛についてトリパノゾーマ及びアフリカの劣悪な環境下に適応する遺伝能力を推定する手法はなかった。そこで、環境適応性の遺伝能力とともに、乳・肉等の生産性の遺伝能力を同時に推定する手法を開発する。

成果の内容・特徴

  1. 環境適応性と生産性の両遺伝能力について、ベイジアン手法をもとに遺伝的変異の大きさ及び両者の遺伝的関連性を推定する手法を開発した。さらに、その値をもとにして種雄牛あるいは個々の牛の両遺伝能力を推定する手法を開発した。両手法は、ともに反復手法として最尤値を求める(図1)。
  2. ケニア飼養のアフリカの環境下で飼育されている牛フリージアン種の乳量の遺伝率は0.172、初産分娩からの生存日数である牛群滞在日数の遺伝率は0.424、両者の遺伝相関は-0.452を示した(表1)。
  3. 種雄牛20頭(娘牛412頭)のうち、娘牛乳量の遺伝能力が高い3頭(+98~136kg)は、逆に牛群滞在日数の遺伝能力は-127~-141日と最も低かった。一方、牛群滞在日数の遺伝能力の高かった2頭(+122~179日)は、逆に乳量の遺伝能力は-81~149kgと低かった(図2)。
  4. 以上の結果から、アフリカの環境下で飼育されている牛は生存性の遺伝的変異が大きいものの、生産性の乳量とは負の遺伝的関連性を持っている事が明らかになった。したがって、両者を別々に推定し優秀な個体を選抜したならば、今まで獲得してきた遺伝的変異を損失する可能性がある。両者の遺伝的能力を高めるためには、同時に両者の関連性を考慮しながら遺伝的能力を推定する本手法が有効である。

成果の活用面・留意点

本手法によって、今まで不可能だったアフリカ牛の両遺伝能力の解析が可能となる。

具体的データ

  1. 図1
  2. 表1
  3. 図2
Affiliation

国際農研 畜産草地部

分類

国際

予算区分
国際プロ(トリパノゾーマ)
研究課題

トリパノゾーマ抵抗性牛の育成のための基礎特性の検定

研究期間

1991~1995年度

研究担当者

富樫 研治 ( 畜産草地部 )

REGE Jeo ( 国際畜産研究所 )

ほか
発表論文等

Togashi, K. and J. E. O. Rege (1994) An iterative procedure for analysing a combination of censored traits in sire and animal mixed models. Genetique selection evolution (Submitted).

日本語PDF

1994_11_A3_ja.pdf1.09 MB

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