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国際農林水産業研究成果情報 第6号 【1998(平成10年度)】

小麦品種の早期開発のための半数体作出効率の改善と育種技術の評価

〔 要約 〕遠縁交雑を利用する小麦半数体作出の効率は、花粉親の選択、切り穂培養、凍結保存花粉等の技術開発により向上した。半数体育種法の利用により、従来の系統育種法によって得られる系統に匹敵する多収量系統を短期間に作出可能であることを明らかにした。
所属 国際農林水産業研究センター・生物資源部 連絡先 0298(38)6305
推進会
議 名
国際農業 、総合農業 専門 育種 対象 麦類 分類 研究

[ 背景・ねらい]

小麦は、世界的には広く栽培され、稲とならび約5億トンの生産量を示す。その半分以上が栽培不良環境の多い開発途上国で生産される。近年では、開発途上国における急激な人口増加に即応するため食糧の安定的かつ持続的生産の早期確保が必須となっている。品種開発の期間を飛躍的に短縮する方法として、遠縁交雑を利用する小麦半数体の作出技術はすでに確立されている(平成2年度研究成果情報)。本研究では、半数体作出効率の向上や得られた倍加半数体系統の評価を行うことを目的とした。


[成果の概要・特徴]
  1. 遠縁交雑を利用する小麦半数体の作出効率の向上
    小麦の培養した切り穂に液体窒素で凍結保存したトウモロコシ及びトウジンビエ花粉を授粉した結果、切り穂培養は植物体上で授粉した場合に比べ小麦半数体作出の頻度に悪影響を及ぼさず、トウジンビエの保存花粉を使用した場合にも新鮮花粉の場合と同様な頻度が得られた(表1)。したがって切り穂培養と保存花粉の組合せによって、小麦の生育時期や場所に関わりなく半数体を効率よく作出することができる。
  2. 小麦育種における半数体育種法の評価
    遠縁交雑を利用して小麦品種間3組合せ雑種 F1から作出して選抜した倍加半数体系統は、同一材料から従来の系統育種法により選抜した系統に比べて、短期間(材料養成から2カ年)で収量調査を開始することが可能でありかつ選抜が容易であること(図1)、収量に関しても十分に匹敵することが明らかとなった(図2A)。しかし、系譜上遠縁な組合せ材料の場合には高収量系統の出現頻度が低い傾向にあるので(図2B)、これを解決するために作出する倍加半数体系統数を増すか、作出途中の半数体世代で選抜を加えて頻度を高める必要がある。

[成果の活用面・留意点]

本手法は、小麦半数体の作出操作法として比較的簡便であるので、開発途上国においてトウモロコシやトウジンビエとの交雑を利用して環境ストレス耐性品種等の早期開発に利用可能である。ただし、マカロニ小麦やライ小麦では、半数体作出頻度は低い傾向にあるとされているので、これを打破する技術開発が今後必要である。


[具体的データ]

表1図1

図2

 


[その他]
研究課題: 熱帯乾燥地における障害抵抗性麦類の育種技術の開発
予算区分: 国際農業(乾燥抵抗性麦)および経常
研究期間: 平成9年度(平成4年〜9年度)
研究担当者: 稲垣正典・長嶺敬(中国農試)
発表論文等: Inagaki,M.N. (1997)Technical advances in wheat haploid production using ultra-wide crosses. JIRCAS J.No.4:51-62.Inagaki,M.N.et al.(1998)Comparison of bread wheat lines selected by doubled haploid, single-seed descent and pedigree selection methods. Theor. Apple. Gent.97:550-556 Apple. Gent.97:550-55
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