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国際農林水産業研究成果情報 第6号 【1998(平成10年度)】

硝化を抑制する熱帯イネ科牧草

〔 要約 〕熱帯イネ科牧草の一種であるBrachiaria humidicolaは、土壌中のアンモニア酸化細菌の増殖を特異的に抑制することにより、硝化作用を抑制し、土壌から発生する亜酸化窒素の量を著しく減少させる。
所属 国際農林水産業研究センター・生物資源部 連絡先 0298(38)6354
推進会
議 名
国際農業、農業環境(地球環境) 専門 環境保全 対象 他のイネ科牧草 分類 研究

[ 背景・ねらい]

熱帯の低肥沃土壌では、利用できる有機物や肥料が限られており、作物による窒素の利用効率を高めるため、出来るだけ硝化による窒素の揮散や溶脱を抑える必要がある。そのため硝化抑制剤入りの肥料が開発されているが、未だ高価であり途上国での使用量は微々たるものである。最近、植物の中に様々な養分獲得機能を持つものが明らかとなっているが、もし、植物自身が硝化抑制作用を持つなら窒素の利用効率を飛躍的に高めるとともに、温暖化ガスの一種である亜酸化窒素の大気への放出も抑制することが出来る。この研究では、ある種の熱帯イネ科牧草地において硝酸態窒素が蓄積されないという報告をもとに、この牧草が硝化抑制作用をもつことを実証し、そのメカニズムの解明とともに、土壌から発生する亜酸化窒素の抑制効果を検討することを目的とする。


[成果の概要・特徴]
  1. CIAT(国際熱帯農業研究センター,コロンビア)から入手した3種類の熱帯イネ科牧草(Brachiaria decumbens(Bd),B.humidicola(Bh)Melinis minutiflora(Mm))をポットで8週間生育させ、土壌のみを採取した。採取した土壌に硫安を添加し、土壌中の硝化作用を測定した結果、Bd,Mm 区では硝化が速やかに進行するが、Bh 区では硝化が始まるまで12日間のラグがあり、硝化作用が抑制されている(図1)。土壌から発生する亜酸化窒素量はBd,Mm 区ともに無植物区と等量であるが、Bh 区ではそれらの1/6以下と少ない(図2)。
  2. 3種類の熱帯イネ科牧草をポットで1O日間生育させ、硫安を液肥として添加し、土壌中のアンモニア酸化細菌数を調べた結果、3種類の牧草の中で、Bh 区のみアンモニア酸化細菌の増殖が抑制され、対照区と同様の値を示している(図3)。
  3. 以上の結果より、Brachiaria humidicola はアンモニア酸化細菌の増殖を特異的に抑制し、アンモニア態窒素が亜硝酸態窒素に変わる反応が抑制されるために、土壌中の硝化作用が抑制され、亜酸化窒素の発生量も減少する(図4)。

[成果の活用面・留意点]

このBrachiaria humidicolaの特異な機能を用いることにより、窒素の利用効率を高め、環境に負荷を与えない農業への応用が期待される。また、この熱帯イネ科牧草は、根よりアンモニア酸化細菌の増殖を抑制する何らかの物質を分泌していることが考察されるので、この物質の同定が必要である。


[具体的データ]

図1図2

図3
図4


[その他]
研究課題: 乾燥・半乾燥地域における持続的肥培管理技術の開発
−熱帯イネ科牧草根による硝化抑制作用−
予算区分: 経常
研究期間: 平成10年度(平成7年〜11年度)
研究担当者: 石川隆之
発表論文等: 1)America Society of Agronomy, 1998 Annual Meeting Abstracts,p335,1998年10月
2)日本土壌肥科学会関東支部大会講演要旨集,p34,1998年10月
3)日本土壌肥科学会誌、投稿中
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