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国際農林水産業研究成果情報 第7号 【1999(平成11年度)】

中国山東省陵県における地下水水質と農耕地の窒素循環

〔 要約 〕中国黄淮海平原の典型的な農業地域である山東省陵県においては、地下水の硝酸汚染の広域化は現時点では認められないが、農耕地土壌と環境への多量の窒素負荷があり、近い将来における環境悪化が予想される。
所属 国際農林水産業研究センター・環境資源部 連絡先 0298(38)6306
推進会
議 名
国際農業 専門 環境保全 対象 維持・管理技術 分類 研究

[ 背景・ねらい]

近年の人口増加と食生活の多様化にともない、中国の農業は質的にも量的にも大きく変化し、地域の環境に対するマイナスの影響が顕在化している。特に、集約農業地域においては、施肥にともなう環境の窒素汚染が懸念されている。本研究では、重要な農業生産地域である黄淮海平原の典型的地域、山東省陵県(1997年における総人口、52.7万人、全耕地面積、62,000 ha:図1)を対象とし、窒素汚染の実態を調査すると同時に、地域の窒素循環とその環境負荷量を評価する


[成果の概要・特徴]
  1. 1997年現在、陵県の農村人口率(88%)および一戸当たりの耕地面積(0.54 ha)は山東省の平均的な値である。主要作物は、小麦、トウモロコシ、野菜、および綿花であり、作物総栽培面積は110,000 ha、農地利用率は1.8、土壌は黄河沖積土である。
  2. 地域内における、1997年度の化学肥料による窒素施肥量は18,738 tonN(平均施肥量は297 kgN/ha)で、堆きゅう肥による窒素施肥量は15,500 tonN(246 kgN/ha)と推定される。
  3. 1997年6月と1998年9月における、農村地域の25地点における井戸水中の硝酸態窒素濃度は、野菜の集約栽培地帯以外の22地点で2 mgN/L以下であり、多量の窒素肥料施用にもかかわらず、硝酸汚染が広域には進んでいない(図2)。
  4. 化学肥料と堆きゅう肥施用量、作物吸収量、およびその他のフロー量推定値は、陵県における1997年度の耕地への過剰な窒素供給量が288 kgN/ha相当であることを示している(図3)。
  5. 調査地域においては、伝統的な有機物の農地還元に加えて、多量の化学肥料が投入され、きわめて多量の窒素が耕地土壌へ負荷されている。以上のことから、近い将来、本地域において地下水の硝酸汚染等の窒素過剰施肥による環境問題が顕在化することが予測される。

[成果の活用面・留意点]

本研究により示された手法を利用して、圃場レベルで開発される環境保全型農業技術の有効性を評価することが可能となる。より詳細な環境影響評価を行うためには、大気や地下水などの環境への窒素負荷量について定量する必要がある。


[具体的データ]

図1

図1 調査対象地域の位置

図1

図2 陵県における井戸水中の硝酸態窒素濃度調査
結果(地下水位1.4〜3.4 m、深さ2.1〜13.3 m)

図1

図3 陵県における窒素フローの推定値(1997年度)


[その他]
研究課題: 中国における環境保全型農業生産技術の評価と開発
予算区分: 国際研究〔中国主要食料資源〕
研究期間: 平成11年(平成9〜15年)
研究担当者: 八木一行、宝川靖和
発表論文等: Yagi, K.,Zhang, R., Zuo, Y., Li, Z., and Hosen, Y. (1999):Cycles of major elements in agro-ecosystems in Huang-Huai-Hai plain and their control - analysis of regional flows of organic matter and nitrogen, Proceedings of 2nd Planning Workshop on Evaluation and Development of Methods for Sustainable Agriculture and Environmental Conservation, p. 19-26

八木一行,宝川靖和,張鋭,左余宝,李志傑 (1999):中国山東省陵県における地下水水質と窒素フロー,日本土壌肥料学会講演要旨集,45,p. 256

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