WTO加盟の中国農業への影響

国名
中国
要約

中国WTO加盟によって、小麦、トウモロコシ、大豆等の輸入が増大することが予想されるが、米の輸入は増えない可能性が強い。WTO加盟後は、安価な農産物の輸入が増えることに加え、価格支持政策の実施が制限されるので、穀物国内価格は上がりにくくなる。

背景・ねらい

   1999年11月米中合意が成立したことにより、中国のWTO加盟は現実味を増した。今後の中国の農業生産や農業政策の展望について検討する際には、WTO加盟の影響について分析することが不可欠である。このため、中国がWTO農業協定を遵守するとともに、関税割当制の導入や関税率の引き下げについて米中合意の内容が適用されると仮定した場合に、WTO加盟が中国農業に与える影響を検討する。

成果の内容・特徴

  1. 将来的な相対価格関係が現在と変化がなく、関税割当制の運用が公正になされる場合、小麦とトウモロコシの輸入は関税割当枠一杯になされる可能性がきわめて強い。ただし、現在程度の内外価格差の水準が維持されれば、2次関税率が高いことから関税割当枠を超えた輸入が起こる可能性は小さい。(表1)
  2. 米については膨大な関税割当枠が準備されているが、輸送コストを考慮すれば、ジャポニカ米、インディカ米とも国産品が価格的な優位性を有する。したがって、大量の輸入が行われるとは考えにくく、関税割当枠はほとんど未消化に終わる可能性が強い。(表2)
  3. 大豆油については、国内価格が国際価格の2倍以上であること、2005年の関税割当枠が現在の総消費量をも上まわっていることから、国内搾油産業の衰退と食用を除く大豆生産の衰退、ということになる可能性が高い。(表2)
  4. 1999年の小麦、トウモロコシ、大豆の国内助成合計量(AMS)は約10%程度と推計される。このことは、仮に中国が「非途上国」としてWTOに加盟するとすれば、現在の穀物の政策価格を引き下げなければならないことを、また、仮に「途上国」資格での加盟が認められるとしても、これ以上政策価格を引き上げることが許されないことを、意味している。

成果の活用面・留意点

   中国のWTO加盟交渉は、2001年1月時点でなお難航しており、農業に関する加盟条件も最終的に確定していない。国内農業に与える影響についても、中国の加盟が正式に決まった時点で、再度検討を行う必要があるが、分析結果の基本的方向については変わらないと思われる。

具体的データ

  1. 表1 中国のWTO加盟に関する米中合意内容(関税割当品目)

    表1 中国のWTO加盟に関する米中合意内容(関税割当品目)
  2. 表2 穀物・大豆・大豆油の内外価格差(1999年12月)

    表2 穀物・大豆・大豆油の内外価格差(1999年12月)
Affiliation

国際農研 海外情報部

分類

行政

予算区分
国際研究〔中国食料資源〕
研究課題

中国の主要地域における新技術普及の農家経営、地域経済への影響評価

研究期間

平成12年度(9~15年度)

研究担当者

池上 彰英 ( 海外情報部 )

中本 和夫 ( 農業研究センター )

ほか
発表論文等

池上彰英 (2000): 中国のWTO加盟と農業政策の課題. 国際農林業協力, 23(1): 2-11.

池上彰英 (2000): アジア諸国のWTO対応-中国-. 農林統計調査, 50(8): 33-40.

日本語PDF

2000_01_A3_ja.pdf646.1 KB

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