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国際農林水産業研究成果情報 第8号 【2000(平成12年度)】

2種のアグロパストラルシステムにおけるPanicum maximum草地の乾物生産性と飼料価値の比較

〔 要約 〕4年間夏ダイズ単作跡地に造成されたPanicum maximum放牧草地では、高い乾物生産性及び飼料価値が示される。4年間夏ダイズ冬ミレット輪作跡地においてもP. maximumの高い乾物生産性、飼料価値を発揮させるには、窒素などの施肥管理が重要である。
所属 国際農林水産業研究センター・畜産草地部、ブラジル農牧研究公社肉牛研究センター 連絡先 0298(38)6365
推進会
議 名
国際農業・草地 専門 栽培 対象 牧草 分類 研究

[ 背景・ねらい]

現在、南米の亜熱帯地域では牧草地と農耕地を相互に輪換することにより、荒廃した草地の更新を図りつつ、作物の連作によって損耗した耕地土壌中の有機物を回復させようとする農牧輪換システム(アグロパストラルシステム)の開発が進められている。本研究では、アグロパストラルシステムにおける前作作物が後作P. maximum草地の牧草生産性に及ぼす影響、並びに生産に及ぼす要因について明らかにする。


[成果の概要・特徴]
  1. ブラジル肉牛研究センター内の4年間夏ダイズ単作跡地、及び4年間夏ダイズ冬ミレット輪作跡地に造成されたP. maximum放牧草地(0.7ha、各2反復)において1998年4月より1999年1月まで6週間ごとに刈り取り調査(移動ケージ法)を行い、牧草生産量、リター分解量、及び総乾物生産量を測定した。前作ダイズの1993年から1996年までの4年間の平均収量は夏ダイズ単作区が2500kg/ha、夏ダイズ冬ミレット輪作区が2618kg/haである。
  2. 調査期間中の牧草の乾物現存量平均値、牧草生産量、総乾物生産量のいずれも、夏ダイズ単作跡区において顕著に高い傾向が認められる(表1)。
  3. 1998年5月及び9月に牧草地上部サンプルを採取し、In vitro 有機物消化率、及び粗タンパク質、中性デタージェント繊維、酸性デタージェント繊維、リグニン、N、Ca、Mg、P、K、Na、Fe、Zn、及びCuの含有率を測定すると、夏ダイズ単作跡区の粗タンパク質、窒素及び銅の含有率は夏ダイズ冬ミレット輪作跡区よりも有意に高かったが(表2)、その外の含有率には差が認められない。
  4. 土壌分析では、両処理区の土壌中の全窒素、銅の含有率に差は認められないが、インキュベーション窒素含有率(可給態N)は夏ダイズ冬ミレット輪作跡区が有意に高い(表3)。これらから、夏ダイズ冬ミレット輪作跡区では、夏ダイズ単作跡区に比較して、土壌中の窒素が後作のP. maximumに吸収されにくくなっていることが推察され、こうした前作の違いによる土壌の理化学的特性の変化が後作のP.maximum草地の乾物生産性及び飼料価値に影響を与えているものと推察される。

[成果の活用面・留意点]
  1. 夏ダイズ単作跡区では、土壌肥沃度や肥料に対する要求性の高いP. maximumでも高い乾物生産性及び飼料価値が示されることが明らかとなった。土地利用効率の向上、ダイズ裏作雑草の抑制及び土壌養分の保全という観点からすると夏ダイズ冬ミレット輪作の方が望ましいが、その輪作跡地でもP. maximumの高い生産性を期待する場合には窒素等の施肥管理が必要となる。
  2. 前作の作付け体系の違いによる土壌の理化学的特性の変化については、長期的な視点からの検討が必要である。

[具体的データ]

表1 表2 表3


[その他]
研究課題: ブラジル中南部における持続型農牧輪換システムの開発
−持続型農牧輪換システムにおける草地利用・管理技術の開発−
予算区分: 国際研究[農牧輪換システム]
研究期間: 平成12年度(9〜11〜13年度)
研究担当者: 菅野 勉・ Manuel C. Macedo(ブラジル農牧研究公社)・神田健一・吉村義則(草地試)・中村卓司
発表論文等: Kanno, T., M.C.M. Macedo, S. Uozumi, V.P.B. Euclides, J.A.Bono, Y. Yoshimura, M. R.Correa, and J.D.G.Santos Jr. (2000) Development of grassland management technology for sustainable agropastoral systems in the sub-tropical zone in Brazil. In JIRCASWorking Report No.19.
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