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国際農林水産業研究成果情報 第8号 【2000(平成12年度)】

エビと二枚貝の混合養殖による有機汚濁物質の軽減

〔 要約 〕ウシエビ(ブラックタイガー)養殖によって排出される有機汚濁物質を減少させ、疾病の発生を抑制する方法としてウシエビとミドリイガイとの混合養殖は有効である。
所属 国際農林水産業研究センター・水産部 連絡先 0298(38)6370
推進会
議 名
国際農業 専門 生物生産、増養殖技術、漁場環境 対象 甲殻類、貝類 分類 国際

[ 背景・ねらい]

東南アジアにおけるエビ類の養殖は配合飼料や化学薬品等の使用により飛躍的発展を遂げてきた。特にタイはウシエビPenaeus monodonの集約的養殖の比率が8割以上であり、くるまえび類では世界最大の養殖生産をあげている。この集約的養殖が興隆する一方では、廃水及び汚泥による有機物汚濁が進行し疾病の頻発、生産性の低下などの問題が顕在化しており、養殖場の持続的利用のための技術開発が急務となっている。本課題では養殖の過程で排出される有機物の負荷量を軽減するためにウシエビと濾過食性二枚貝であるミドリイガイPerna viridisとの混合養殖実験を行い物質収支や水底質変化についてウシエビの単一種養殖と比較する。


[成果の概要・特徴]

タイ中央部のペチャブリ県にあるウシエビ養殖場でコンクリート水槽及び大規模素堀池を用い、ウシエビとミドリイガイを混合飼育(混合比率1:0.65〜1.3個体)して生残率、窒素炭素収支等を算出した。

  1. コンクリート水槽ではウシエビの生残率はウシエビ収容密度20,30,50個体/m2の単一養殖区ではそれぞれ74,70,62%、同収容密度の混合区では68,65,59%と単一区の方がやや高く、密度が高くなるにつれ下降する傾向が見られた。エビの平均サイズは高密度飼育では著しく小さく、また混合区の方が単一区よりも大きい。ミドリイガイの生残率はエビの収容密度が高いほど低く、エビによる食害を強く受けている。(図1)
  2. コンクリート水槽実験における餌料中窒素のエビ、排水(沈積物含む)、その他(貝への固定、脱窒等)への転換量を図2に示す。排水への転換率は、単一区の20,30,50個体/m2収容実験水槽ででそれぞれ75,72,36%、混合区で60,71,30%であり、いずれも混合区の方が少ない。ミドリイガイへの固定率は低生残率のため20個体/m2で0.1%に過ぎなかった。その他は主に脱窒と考えられる。
  3. 面積0.7〜0.8haの素堀池の実験ではウシエビが単一養殖で2.0t/ha、混合養殖で1.5t/haとミドリイガイが0.8t/ha生産された。混合養殖でエビの生産が低いのは植物プランクトン量が単一養殖よりも高かったので、昼夜の溶存酸素濃度変動が大きくなったためと考えられる。ミドリイガイは餌料中窒素の2.7%、炭素の4.4%を除去している。エビとの合計により取り上げられた窒素は22.6%、炭素は16.3%となり、この値は単一養殖より多かった。一方混合養殖池では汚泥の堆積量が単一養殖の半分程度であった(図3)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 素掘池の実験では貝を付着させた竹竿が動水車による流れを妨げ水質が悪化する現象も見られたので、竿の配置及び動水車の稼働について池内の流速制御の観点から検討する必要がある。
  2. 実用的な混合養殖法が確立されれば、廃水処理池を持たない小規模養殖業者に本手法を普及させエビ養殖による環境汚染を軽減させることが出来る。

[具体的データ]

図1 図2 図3


[その他]
研究課題: 閉鎖性水域における持続的生産技術の開発研究
予算区分: 経常
研究期間: 平成12年度(10〜12年度)
研究担当者: 日向野純也、Phongchate Pichitkul(カセサート大学水産学部)
発表論文等: 未発表
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