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国際農林水産業研究成果情報 第9号 【2001(平成13年度)】

トマトのミトコンドリア型sHSPの高温ストレスに対する機能

要約 トマトのミトコンドリア型スモールヒートショックプロテイン(MT-sHSP)は、高温ストレスによる酵素の失活を防ぐ働き(分子シャペロン作用)がある。
担当 沖縄支所 庄野真理子、Jian Liu(Shandong Teachers University)、Ishwal Singh(Indian Institute of Sugarcane)、Jaral Ud Din(Land Resources Research Institute)、三宮一宰(生研機構)、鈴木克己、塚口直史(生研機構)、江川宜伸
分類 研究

[ 背景・ねらい]

生育適温を上回る高温ストレスは作物に不稔や生育障害などを引き起こすことがよく知られている。このような高温ストレスによる障害は熱帯・亜熱帯地域において低生産性の要因の一つとなっており、今後地球温暖化により深刻化すると考えられている。
いわゆるストレス反応を支える一群のタンパク質であるヒートショックプロテイン(HSP)は、普段は分子シャペロンとしてタンパク質の介添え役を果たしているが、環境変化に対しては抵抗性を誘導する。低分子のスモールヒートショックプロテイン(sHSP)、特に、生殖器官のストレス時におけるsHSP の役割に関しては、まだほとんど研究は行われていない。ミトコンドリアはエネルギー供給に欠かすことの出来ない細胞内小器官であり、生殖器官における役割も大変重要である。そこで、現在我々はMT-sHSPに関して、生殖器官における発現と、それらが熱ストレス下において果たす機能を解明することにより、高温ストレスによる低生産性の解消を目指している。


[成果の概要・特徴]
  1. トマト葉のcDNA ライブラリーのスクリーニングによりMT-sHSP の全長cDNA を得た(LeHSP23.8)。コードされるタンパク質は210 アミノ酸、推定分子量は23.8kDa である。
  2. LeHSP23.8 遺伝子はトマトの葉において通常の生育温度(25oC)では全く発現が認められず、36oC2hr 以上の温度処理で初めて発現が認められる熱誘導性の遺伝子である(図1)。花では葉よりも低温条件(32oC 2hr)で発現が誘導される(図2)。これらの熱誘導性の発現様式は、細胞質型等、他のクラスのsHSP 遺伝子の発現と類似している。
  3. 大腸菌(E. coli)発現系を用いた組換えMT-sHSP は、酵素citrate synthase のグアニジン塩酸塩による化学変性からの回復を助け、高温失活を抑制し、また失活した酵素を回復させる効果を持つ(図3A、B)。
[成果の活用面・留意点]

トマトMT-sHSP (LeHSP23.8)は遺伝子導入による耐暑性作物作出のための候補遺伝子の一つとして有望である。


[具体的データ]


[その他]
研究課題:
作物の高温ストレス適応性向上に関する研究
予算区分: 法人プロ〔高温ストレス〕、国際農業〔高温ストレス〕、基礎研究推進事業
研究期間: 2001 年度(1998 〜 2005 年度)
研究担当者: 庄野真理子、Jian Liu (Shandong Teachers University)、Ishwar Singh (Indian Institute of Sugarcane)、 Jaral Ud Din (Land Resources Research Institute)、三宮一宰(生研機構)、鈴木克己、塚口直史 (生研機構)、江川宜伸
発表論文等:  
  1. 遺伝子情報データベースDDBJ に登録 (accession number AB026893)
  2. Liu, J. and Shono, M. (1999):Characterization of mitochondria-located small heat shock protein from tomato (Lycopersicon esculentum). Plant and Cell Physiology, 40, 1297-1304
  3. 特許出願中(特願2000-286097)

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