TOP >アーカイブス(刊行物:国際農林水産業研究成果情報第10号)

国際農林水産業研究成果情報 第10号 【2002(平成14年度)】

ブラジルの亜熱帯サバンナ(セラード)に生育する熱帯イネ科牧草の窒素利用特性

〔 要約 〕ブラジル亜熱帯サバンナ(セラード)で主に栽培されているイネ科牧草のBrachiaria decumbens,B. brizanthaは窒素反応性が高い。またB. humidicolaは根の窒素吸収能力が高いため、低窒素環境での栽培に適している。
所属 国際農林水産業研究センター・生産環境部 連絡先 029(838)6355
推進会
議 名
国際農林水産業 専門 土壌肥料 対象 牧草 分類 研究

[ 背景・ねらい]

ブラジル亜熱帯サバンナ(セラード)の土壌は肥沃度が低く、低窒素がイネ科熱帯牧草の主要な生育制限要因の一つとなっている。したがって、土壌および施肥窒素に対する牧草の適応機構の種間差を解明し、このような土壌に適した草種を明らかにすることは重要である。また、この地域において主にBrachiaria brizantha(BB),B. decumbens(BD),B. humidicola(BH)の3種が栽培されており、これら牧草の窒素栄養に関する生理学的知見は極めて少ない。これらの熱帯イネ科牧草の窒素吸収とその利用を明らかにする。


[成果の概要・特徴]
  1. BD,BB,BHを供試し、ポットにて3段階の窒素施肥(0, 50, 150 kgN/ha相当、以後各処理区を0N,1N,2N区と略す)をおこない栽培した。その結果、BB, BDは窒素施肥反応性が高く施肥量の低下にともない乾物重は低下する(図1)。BHの窒素施肥反応性は他の牧草種と比較して小さく、施肥窒素量の減少にともなう乾物重の低下は大きくない。このことからBHは他の牧草種より低窒素環境下での栽培に適している。また、その時の0N区の植物体の相対窒素吸収速度(RAR)はBHで他の牧草種より高い(図2)。
  2. 無窒素施肥の圃場において栽培したPanicum maximum(PM), BB, BD, BHの窒素固定による植物体窒素への寄与率(%Ndfa)を15N自然存在比法を用い推定した。その寄与率は9-27%であり、BHでBB, BDより低い(表1)。つまり、BHで他の牧草種より土壌窒素に依存している。
  3. 植物の窒素吸収速度はミカエリス−メンテンの式(式1)に従うことが知られており、この式を用い各牧草種の根の窒素吸収のカイネティック解析を行った。BHでKm値が他の牧草種より低い(表2)。このことはBHが硝酸態窒素に対して親和性が高く、低窒素濃度下でも窒素を吸収する能力が高いことを示す。

[成果の活用面・留意点]

ブラジル亜熱帯サバンナ(セラード)地域における低養分環境下に適応した牧草の品種改良ための生理学的特性として利用できる。また、肥沃度が異なるセラード牧草地の土壌に適応した牧草の選択指針として参考になる。


[具体的データ]


[その他]
研究課題:
持続型農牧輪換システムにおける熱帯牧草および作物の養分吸収・利用特性の解明−熱帯牧草および作物の窒素吸収および利用−
予算区分:
国際プロ〔農牧輪換〕
研究期間:
2002年度(2000〜2002年度)
研究担当者:
中村卓司,菅野勉(東北農研),大脇義成(中央農研),C. H. B. Miranda (ブラジル農牧研究公社肉牛研究センター)
発表論文等:
  1. 中村卓司ら (2002): ブラジルの亜熱帯サバンナ(セラード)に生育する熱帯イネ科牧草(Brachiaria属牧草)の窒素利用特性. 日本土壌肥料学会誌, 73,421-425.
  2. Nakamura, T. et al. (2002): Different nitrogen uptake kinetics of ammonium and nitrate in Brachiaria spp. Proceedings of the XXV Reuniao Brasileira de Fertilidade do Solo e NutricProceedings of Simposio Ecologia e Biodversidade do Cerrado, June 2002 Brasilia, DF, Brazil, 11-12.

前のページ

次のページ