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国際農林水産業研究成果情報 第10号 【2002(平成14年度)】

熱帯降雨林はゴムプランテーションに比べて優れた水保全機能を持つ

〔 要約 〕半島マレイシア・ブキタレ水文試験地内の熱帯降雨林は隣接するゴムプランテーションより土層が厚く、土壌の孔隙率及び透水性が高いため、雨水を一時的に地中に貯留し、洪水流を軽減する機能(水保全機能)に優れている。
所属 国際農林水産業研究センター・林業部 連絡先 029(838)6309
推進会
議 名
国際農林水産業 専門 森林環境保全 対象 その他広葉樹 分類 研究

[ 背景・ねらい]

1980年代以降、半島マレイシアでは森林から主要農作物への土地利用転換が進み、主要農作物であるゴムやオイルパームプランテーションが広がった。現在、プランテーション開発は小康状態にあるものの、1996年におけるオイルパーム及びゴムは主要農作物の46%及び32%(面積)を占めている。半島マレイシアではプランテーション開発により、その周辺地域で洪水流が増加し、開発による森林攪乱が主要因であると指摘されているが、熱帯降雨林がもつ水保全機能さえ、まだ十分に明らかにされていない。
半島マレイシアに位置するブキタレ水文試験地内の天然二次林(図1)とそこに隣接するゴムプランテーション(図2)において、土層深度及び孔隙率、土壌の飽和透水係数を測定し、熱帯降雨林とゴムプランテーションが有する水保全機能について比較検討する。


[成果の概要・特徴]
  1. 斜面調査用貫入試験機で測定した結果、ゴムプランテーションにおける土層深度(平均値:130cm)は、熱帯降雨林における土層(平均値:277cm)より浅く、ゴムプランテーションの中では特にテラス平坦部の土層深度(平均値:119cm)が傾斜部の土層深度(平均値:141cm)より浅い。
  2. 土壌深度調査の結果をもとに代表的土層を選定し、不攪乱土壌サンプル(63点)を採取して雨水の浸透しやすさ(飽和透水係数:Ks)の値を求めたところ、土壌深度が増加するにつれてKs値は減少する(表1)。熱帯降雨林でのKs値は、この地域の時間当たりの降水量より大きい値を示すことから、地表に到達した雨水の多くは地中に浸透することができる。一方、ゴムプランテーションでは、テラス傾斜部のKs値が熱帯降雨林と同様な値を示すものの、テラス平坦部のKs値は熱帯降雨林のKs値と比較して2オーダー小さく、雨水が浸透しきれない値を示す。
  3. 土壌の飽和体積含水率もKs値と同様に土壌深度が増すと減少する傾向を示し、それらの大きさは、熱帯降雨林 > テラス傾斜部 > テラス平坦部、という順である(表1)。
  4. テラス平坦部は、プランテーション造成時に表土が剥ぎ取られ、重機によって締め固められるため土壌は孔隙量が少なく、土層深が浅く、透水性が低い。その結果、降水量が頻繁に50mm h-1を超えるこの地域では、しばしば洪水流や地表流が容易に発生する(図3)。これらの結果は雨水を地中に貯留する機能がゴムプランテーションでは低いことを示している。一方、熱帯降雨林の多量な孔隙量と厚い土層、高い透水性は雨水を一時的に地中に貯留し、洪水発生を軽減する機能に優れている。

[成果の活用面・留意点]

熱帯降雨林とゴムプランテーションにおける水保全機能の違いは、この地域における水保全機能や洪水防止機能等を知る基礎資料となり、土地利用計画等の施策に反映させることができる。水保全機能を高めるためには、プランテーションから森林への再転換等、一度失われた水保全機能を改善するための森林再生技術の確立が必要である。


[具体的データ]


[その他]
研究課題:
択伐跡地の森林水利機能の評価
予算区分:
環境省地球環境研究総合推進費
研究期間:
2002年度(2002〜2004年度)
研究担当者:
野口正二,Baharuddin Kasran (マレイシア森林研究所),Zulkifli Yusop (マレイシア工科大学),坪山良夫(森林総合研究所),谷誠(京都大学)
発表論文等:
Noguchi, S.,Baharuddin, K.,Zulkifli, Y.,Tsuboyama, Y. and Tani, M. (2003): Depth and physical properties of soil in forest and rubber plantation, Peninsular Malaysia. J. Trop. For. Sci.., 15, (in press)

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