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国際農林水産業研究成果情報 第11号 【2003(平成15年度)】

イネのアルミニウム耐性のメカニズムと耐性品種の迅速スクリーニング手法

〔 要約 〕イネのアルミニウム耐性には、コムギの場合とは異なり、根端におけるAlとCaの相対保持量が大きな役割を果たしている。このメカニズムに基づいて、より迅速に耐性品種を選抜することができる。
所属 国際農林水産業研究センター・生産環境部 連絡先 029(838)6354
推進会
議 名
国際農林水産業 専門 作物生理 対象 陸稲 分類 研究

[ 背景・ねらい]

陸稲(畑イネ)は途上国の小農にとって重要な畑作物であるが、湿潤熱帯に多く分布する赤黄色土壌では土壌酸性が主要な生育制限要因となっていることが多い。経済的な理由から炭カルの大量施用による土壌pH矯正は難しいことが多く、耐性をもつ品種の開発が望まれている。しかしながら、陸稲の酸性土壌耐性は、多くの研究がなされているコムギなどに比べて不明な点が多い。これまで南米のサバンナで行われたJIRCASの研究において、酸性オキシソル土壌における陸稲の酸性土壌耐性の品種間差に、カルシウム(Ca)が大きく関与していることが示されている。そこでこの点に着目して、これまで多く研究されてきたコムギとの対比で、陸稲の酸性土壌耐性の機構を明らかにし、効率のよいスクリーニング方法を提案した。


[成果の概要・特徴]
  1. 酸性土壌害の主因はアルミニウム(Al)であるとされており、その最初期の症状は根の伸長阻害である。水耕液にAlを添加した区の根相対伸長量(%)をもとにイネのAl耐性を判定した。Al耐性はトヨハタモチ(73%)>Oryzica Sabana6(53%)>IR72(28%)>IR36(19%)≧Kasalath(16%)の順である(図1)。Caの濃度を高めることによっていずれの品種でも生育は回復するが、その程度は感受性品種ほど大きい(図1)。
  2. イネの場合、Al添加によって伸長が低下しているところにCaの同族元素であるバリウム(Ba)を加えると、いずれの根の伸長もさらに低下する(図1)。しかしコムギ(Atlas66)の場合は、Baの添加によって根の伸長阻害は完全に回復する(図2)。このようにAl過剰害を受けている根に対するBaの効果がイネとコムギとでは正反対であり、Al耐性の機構が異なっていることが推察される。
  3. 従来コムギではAl耐性のスクリーニング手法として、根の内部に浸透したAlの量をヘマトキシリンで染色して定量する方法が広く使われ、その実効性も確認されてきた。しかしこの方法はイネには適用できないことがわかっている。これは上述のように両作物におけるAl耐性の機構が異なるためであると推察される。そこで、イネでは根細胞壁のAlとCaの吸着能の差が酸性土壌耐性メカニズムに関与している可能性があることをふまえ、ピロカテコールバイオレット(PCV)を用いた短時間スクリーニング法を開発した。すなわち、15分のAl処理で根細胞壁にAlを吸着させた後、高Ca 濃度の溶液に移して易交換性AlをCaで置換し、残った難交換性AlをPCVで染色した。その結果、本スクリーニング法では、感受性の3品種の根端は抵抗性の3品種のものより濃く染色され(図3)、根伸長をもとに評価したAl耐性の結果と一致した。一方、高Ca濃度溶液による易交換性Alの置換除去を省略し、脱塩水でのみ洗浄した場合は、染色の品種間差は明確でなかった。この方法により極短時間のスクリーニングが可能である。

[成果の活用面・留意点]
  1. 本スクリーニング方法を、酸性圃場における生育と比較させる必要がある。

[具体的データ]

図1 図2
図3


[その他]
研究課題: イネのアルミニウム耐性および鉄過剰耐性の生理機構
予算区分: 基盤、技会プロ〔アフリカ稲作国内支援〕、受託〔科学技術特別研究員〕
研究期間: 2003 年度(2001 〜 2003 年度)
研究担当者: 岡田謙介、渡部敏裕
発表論文等:
  1. Okada, K., Fischer, A.J., Perez Salasar, F.A. and Canon Romero Y.(2003): Difference in the retention of Ca and Al as possible mechanisms of Al resistance in upland rice. Soil Science and Plant Nutrition 49:889- 895.
  2. Okada, K. and Fischer, A.J. (2001): Adaptation mechanisms of upland rice genotypes to highly weathered acid soils of South American savannas. In. N. Ae, et al. (Eds.) Plant Nutrient Acquitition -New Perspectives- Springer -Verlag, Tokyo pp. 185-200.
  3. 岡田謙介、Albert Fischer(2002): 南米オキシソルにおける陸稲の酸性土壌耐性の品種間差は低Ca耐性の差による.日本土壌肥料学会講演要旨集、48-66.
  4. 渡部敏裕、岡田謙介(2002): イネのアルミニウム耐性品種間差に関する研究.日本土壌肥料学会講演要旨集, 48-48.
  5. 渡部敏裕、岡田謙介(2003): 低pH 条件下で多価カチオンがイネの根伸長に与える影響−アルミニウムイオンを中心に−.日本土壌肥料学会講演要旨集, 49-70.

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