アズキ近縁野生種Vigna hirtella に見出されたアズキうどんこ病抵抗性

要約

アズキ近縁野生種 Vigna hirtellaアズキうどんこ病菌に対して抵抗性を示す。本種は栽培アズキと交配可能で、F1 は本菌に対し抵抗性を示す。また、戻し交配第1 世代(BC1)では感受性反応と過敏感反応が1:1 に分離する。よって、本抵抗性は単一の優性遺伝子によって支配されている。

背景・ねらい

   アズキうどんこ病は熱帯・亜熱帯地域におけるアズキやリョクトウなどVigna 属豆類に感染する最も重要な糸状菌病害のひとつである。これまでアズキ品種の中に抵抗性のものは見いだされていない。そこで、抵抗性アズキの開発を目指して、これまで国際農林水産業研究センター(JIRCAS)が収集してきたアズキ野生遺伝資源の一部の材料につき、アズキうどんこ病抵抗性の有無を調査する。なお、ここで用いたV. hirtella 系統は、JIRCAS から琉球大学への委託事業「熱帯アジアのマメ科作物野生種の分布と生態」(平成6~8年)において北タイで収集したものである。

成果の内容・特徴

  1. 栽培アズキの主要品種である「エリモショウズ」やアズキ祖先野生種ヤブツルアズキ、近縁野生種ヒメツルアズキ、ヒナアズキは、アズキうどんこ病菌Podosphaera phaseoli に激しく罹病するが、アズキ近縁野生種V. hirtella は過敏感反応を示し、抵抗性である(図1、図2)。
  2. V. hirtella と栽培アズキの間では、F1の作出が可能で、アズキへの戻し交配も容易である(国際農業成果情報第6号および図2)。
  3. 「エリモショウズ」とV. hirtella とのF1は初生葉への接種試験で抵抗性を示す(図2)。
  4. BC1世代{(V. hirtella ×「シロアズキ」)×「エリモショウズ」}の初生葉、第1本葉への接種試験では病原菌に対する反応は感受性と抵抗性が24:21に分離した(図3)。
  5. F1における抵抗性、及び戻し交配交雑集団における1遺伝子支配の分離理論比1:1に対するχ2値は0.2(0.7>p>0.5)で、本抵抗性が単一の優性遺伝子に支配されていることを示す。

成果の活用面・留意点

  1. アズキうどんこ病菌レースは多様であると想像されるので、これまでJIRCASが収集してきたアズキ野生遺伝資源について抵抗性の有無を評価する必要がある。
  2. 現在BC2集団が得られている。抵抗性アズキの開発のため、「エリモショウズ」による戻し交配と抵抗性検定・選抜を継続する必要がある。
  3. アズキうどんこ病菌の生理レースについてはこれまで知見がない。ここで見いだした抵抗性を崩壊させるレースの存在(出現)が危惧される。

具体的データ

  1.  

    図1
  2.  

    図2
  3.  

    図3
Affiliation

国際農研 沖縄支所

分類

研究

予算区分
独法・生資研/バイテク・ジーンバンク
研究課題

アズキ近縁野生遺伝資源有用特性の利用による育種素材化

研究期間

2003 年度(2001 ~ 2003 年度)

研究担当者

江川 宜伸 ( 沖縄支所 )

大前 ( 沖縄支所 )

庄野 真理子 ( 沖縄支所 )

柏葉 晃一 ( 沖縄支所 )

ほか
発表論文等

2004 年の熱帯農業学会春季大会で発表予定。

日本語PDF

2003_30_A3_ja.pdf2.54 MB

English PDF

2003_30_A4_en.pdf69.72 KB

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