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国際農林水産業研究成果情報 第12号 【2004(平成16年度)】

東北タイ農村における所得増加に対する農民意識と情報入手手段

〔 要約 〕家族内を中心とする限定的な情報入手手段への依存が強い農村では、自家内での個別的経営努力に対する評価が高いのに対し、農民グループによる主体的情報収集手段を持つ農村では、技術に対する評価・期待が高い。
所属 国際農林水産業研究センター・国際情報部 連絡先 029(838)6366
推進会
議名
国際農林水産業 専門 経営 対象 経営意識 分類 研究

[背景・ねらい]

農業経営の展開と成果は、a)客体的要因(1.気象・土壌等の自然条、2.土地・労働力・資本を構成要素とする経営構造、3.農家を取り巻く社会構造)とb)主体的要因(経営者の人間的属性)の二つに規定される。ところが、従来の途上国研究では自然条件や経営構造を中心とする客体的要因に関するものが主流であり、主体的要因に関する研究蓄積は数少ない。そこで、ここでは社会構造と密接に関連する情報入手手段・経路に焦点を当て、その態様が主体的要因の一つである農民の意識や考え方とどのように関連しているかを明らかにする。
上記目的のために、自然条件、経営構造の類似した2村を選定し、各村からそれぞれ無作為に100戸抽出後、経営主宰者を対象とした面接調査を通じて、営農情報の入手先(複数回答可)、農業所得に影響を及ぼす要因の5段階ランクづけに関する質問等を実施した。


[成果の概要・特徴]
  1. 対象地域の概要
    コンケン市近郊のN村(農家数:218戸、耕地面積/戸:3.6ha 、水稲作付率:51%、サトウキビ作付率:38%)及びK村(同:203戸、3.7ha 、83%、13%)は、波状地形を活かして低位水田に自給用モチ米、高位畑地に換金用サトウキビやキャッサバが作付けられている典型的な東北タイ農村である。

  2. 情報入手手段・経路の特徴
    1) ;図1にみる通り、情報源は6つに分けられ、それぞれ次のような特徴をもつ。a)「家族のみ」:特に両親からの情報伝達、b)「親戚」及び「友人」:集落内の血縁や地縁などの基礎集団。c)「農民グループ」:NGO等によって結成された作目別機能集団で、メンバーのほとんどは集落内居住者。d)「普及」及びサトウキビ「工場関連」組織:農民への情報提供を目的意識的に行う外部組織。
    2) N村では、家族以外誰にも相談しない農家が過半数(52%)に及ぶ。それ以外の農家は主として集落内の親戚(21%)・友人(17%)や工場関連組織(21%)を通じて情報入手している。これらはいずれも既存の社会関係や外部の既成組織を利用した情報収集と言える。
    3) K村ではN村に比べて家族のみから情報入手している農家は少なく(25%)、その分親戚や普及機関からの情報入手率(40%、25%)が高い。しかしK村の特筆すべき特徴は、NGOの支援によって結成された農民グループからの情報収集比率が高い点である(46%)。これらは外部からの金銭・労力面の援助に支えられているとは言え、農民の自主性を尊重した運営のもとで、外部情報の収集・農民相互の情報交換を積極的に行っている。

  3. 所得増加規定要因に対する農民意識
    1) 両村における情報入手手段の相異と農民意識との関連を明らかにするために、5つの農業所得増加要因(価格、自然条件、技術導入、経営努力、協同化)に対する農家の重要度認識を5段階に点数化し、それらデータから意識構造の相異を明らかにした(表1参照)。なお、価格は農産物販売価格、自然条件は気象・土壌条件、技術導入は新技術の導入、経営努力は自家内での努力・工夫、協同化は他家との共同利用等を意味する。
    2) N村では、価格及び自然条件が所得増加に決定的な影響を与えるという意識が強い傾向にある。自由競争的市場構造ゆえの価格変動や天水依存ゆえの自然変動が、経営成果に直接影響している現実が農民意識に端的に反映されている。残り3要因では自らの経営努力に対する評価が、技術導入や協同化より高い。家族内を中心とする限定的な情報収集手段に依存する農家割合の高さが、自家内での個別的努力に対する評価と密接に関連している。
    3) K村でも自然条件が所得増加に決定的な影響を与えるという意識が強い傾向にあるが、N村との相異は技術導入に対する評価が高いことである。新技術は経営にとって外部的存在であるが、農民の主体的努力や外部への働きかけによって導入可能なものである。NGO等の外部機関と連携したグループ活動とそこでの情報交換が農民の情報収集能力と主体性を向上させ、技術に対する期待と評価を高めていると推察される。なお、個別志向の強いタイ農民気質を反映して、協同化は両村とも最も低い評価であるが、K村ではN村より評価が高い(1%水準で有意差)ことは上記のグループ活動と無縁でない。

[成果の活用面・留意点]
  1. 情報入手手段や方法と農民意識との関連性は、導入作目や導入するための経営活動、さらには外部機関の関わり方等によって変化することに配慮を要する。

[具体的データ]


[その他]
研究課題:
「水利用と農業経営方式の関連解明」、「天水地域における農民意識と経営行動」
予算区分: 国際プロ〔天水農業〕/基盤〔経営行動〕
研究期間:
2004年度(2002〜2004年度)/(2004〜2005年度)
研究担当者:
安藤益夫・Nongluck Suphanchaimat (コンケン大学農学部)
発表論文等:
1) Ando, M. (2003):Intensive land-use with farm pond irrigation and its limitations in Northeast Thailand. UN International symposium “Alternative approaches to enhancing small-scale livinghoods and natural resources management in marginal areas” proceedings 89-101.
2) Ando, M. ・Nongluck Suphanchaimat (2004):“Identification of socio-economics factors and conditions for sustainable farm management in Northeast Thailand”. National Research Council of Thailand Report.

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