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国際農林水産業研究成果情報 第12号 【2004(平成16年度)】

乾燥誘導性のZinc-Finger型転写因子遺伝子を用いたストレス耐性植物の開発

〔 要約 〕環境ストレス時には特異的遺伝子の発現が押さえられる。遺伝子発現を押さえる働きを持つリプレッサーとして4種のZinc-Finger型転写因子の遺伝子を明らかにした。これらの遺伝子のうち乾燥や塩や低温によって誘導されるSTZ遺伝子の過剰発現体はストレス耐性を示し、ストレス時に遺伝子発現をおさえて植物に耐性を付与すると考えられた。
所属 国際農林水産業研究センター・生物資源部 連絡先 029(838)6641
推進会
議 名
国際農林水産業 専門 バイテク 対象 モデル植物 分類 研究

[ 背景・ねらい]

近年、砂漠化や土壌の塩類化等地球規模の環境劣化が深刻化している。また、世界各地で異常気象が報告されており、農業生産に大被害を及ぼしている。このため、突然の異常気象や劣悪環境下でも栽培可能な作物や環境保全に役立つ植物を開発することは、国際的に重要な課題となっている。環境ストレス耐性作物の分子育種は、その耐性獲得の分子機構が複雑なため研究開発が遅れている。本研究では植物の持つ環境耐性機構を分子レベルで解明して、環境ストレス耐性植物の分子育種に役立てることを目的とする。これまでに、乾燥や塩や低温ストレス時には多くの耐性遺伝子の発現が誘導されることが明らかにされている。一方、ストレス時には多くの特異的遺伝子の発現が押さえられることも明らかにされており、これらの遺伝子の機能や制御機構を明らかにすることが重要と考えられる。


[成果の概要・特徴]
  1. これまでに単離しているAZF1AZF2AZF3STZと名付けたZinc-Finger型の転写因子をコードする遺伝子のうち、AZF2は乾燥と塩ストレスにより、STZは乾燥や塩や低温ストレスによって発現が誘導される。

  2. 大腸菌中で合成したAZF1、AZF2、AZF3、STZタンパク質はA(G/C)T配列に特異的に結合するDNA結合性タンパク質であることをゲルシフト法を用いて明らかにした。

  3. シロイヌナズナの葉肉細胞から調整したプロトプラストを用いたトランジェント発現系において、これら4種のZinc-Finger型の転写因子はリプレッサーとして機能し、標的遺伝子の発現を押さえる働きを示す。

  4. ストレス誘導性のAZF2STZ遺伝子のプロモーターとGUSリポーター遺伝子とを結合したキメラ遺伝子を導入した形質転換シロイヌナズナを用いて、AZF2STZ遺伝子が植物体の葉や根のどの組織でもストレスによって誘導されることを示した。

  5. STZ遺伝子は乾燥や塩や低温時に遺伝子発現を誘導する転写因子DREB1Aの過剰発現体で発現が上昇しており、転写活性化因子であるDREB1Aによって発現が制御されている。

  6. カリフラワーウイルスの35Sプロモーターを用いてSTZを過剰発現したシロイヌナズナ形質転換体では、生育の遅れが観察された。また、乾燥ストレスに対して高いストレス耐性が示された。リプレッサーであるSTZはストレス時に標的遺伝子の発現を押さえることで、ストレス耐性を獲得すると考えられる。

[成果の活用面・留意点]
  1. STZ遺伝子の機能に関する研究成果は、環境ストレス時の生育阻害とストレス耐性の付与との関係の解明に役立つ。
  2. STZ遺伝子は環境ストレス耐性作物開発のための有用遺伝子として利用できる。

[具体的データ]


[その他]
研究課題:
乾燥誘導性のZinc-Finger 型転写因子遺伝子を用いたストレス耐性植物の開発
予算区分: 基盤〔耐性遺伝子〕
研究期間:
2004年度(2003〜2005年度)
研究担当者:
篠崎和子・圓山恭之進・坂本秀樹・佐久間洋・春日美江・伊藤裕介
発表論文等:
1) Maruyama, K., Sakuma, Y., Kasuga, M., Ito, Y., Seki, M., Goda, H., Shimada, Y., Yoshida, S., Shinozaki, K. and Yamaguchi-Shinozaki, K. (2004): Identification of cold-inducible downstream genes of the ArabidopsisDREB1A/CBF3 transcriptional factor using two microarray systems. Plant J., 38, 982-993.
2) Sakamoto, H., Maruyama, K., Meshi, T., Iwabuchi, M., Shinozaki, K. and Yamaguchi-Shinozaki, K.(2004): Arabidopsis Cys2/His2-type zinc-finger proteins function as transcription repressors under drought-, cold-, and high-salinity-stress conditions. Plant Physiol., 136, 2734-2746.
3) Yamaguchi-Shinozaki, K. and Shinozaki, K.(2005): Organization of cis-acting regulatory elements in osmotic- and cold-stress-responsive promoters. Trends Plant Sci., 10, 88-94.
4) Shinozaki, K., Yamaguchi-Shinozaki, K. and Seki, M.(2003): Regulatory network of gene expression in the drought and cold stress responses. Curr. Opin. Plant Biol., 6, 410-417.

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