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国際農林水産業研究成果情報 第13号 【2005(平成17年度)】

雨の少ないマリ共和国南部の浸透速度の低い圃場では、雨が肥料成分を地表面流出させ、収量低下をまねく(PDF247KB)

〔 要約 〕 マリ共和国南部の水の浸透速度の低い圃場での作物の低収量の原因は、少雨でなく、雨による肥料成分地表面流出である。この低収量は、緩効的施肥で改善される。
所属 国際農林水産業研究センター・沖縄支所 連絡先 0980(82)2314
推進会
議 名
国際農林水産業 専門 土壌肥料 対象 作物一般 分類 研究

[背景・ねらい]

マリ共和国南部の年間降水量は600から1000mmである。この降水量では作物生産に不足していると考えられがちである。一方、マリ共和国は地質学的に古い盾状地に位置するため、数億年間の浸食と再堆積で水の浸透速度の極端に高い土壌と極端に低い土壌が分布する。これらの土壌では降水強度の強いイベントにともない、肥料成分の多くがそれぞれ下方流出、地表面流出することが、収量が低下する要因であるとみられる。そこで、作物収量に及ぼす水の浸透速度の影響を解析し、浸透速度の低い圃場での対策を講じる。


[成果の概要・特徴]
  1. マリ共和国南部での雨期は概ね7月中旬から9月上旬で、雨期の始めに降水強度が強い。しかし、浸透速度の比較的低い圃場では、土壌水分の増加は降水量の増加に大きく遅れる(図1)。
  2. その場合、有効な降水は10%以下で、残りは地表面流出と蒸発で失われる。とくに、浅い土層の圃場容水量を満たすには、多くの降水量と時間が必要であるため、有効降水率が低い(表1)。
  3. 現地での浸透速度は、断面積20cm2高さ5cmの採土管2本を連結し、2.5cm土壌に差し込み、50mmの水を注ぎ、浸透時間から求めている。実際の浸透速度に比べて過大評価するが、簡便なので、現場での測定に便利である。
  4. 浸透速度0.05mm/sec以下、1.00mm/sec以上で作物収量が極めて少ない。また、0.05mm/secから1.00mm/secの範囲では、浸透速度が高い圃場で収量が多い(図2)。
  5. 浸透速度が中庸な圃場と低い圃場での棉花の収量に及ぼす尿素の付加施肥効果はないが、被覆尿素の付加施肥効果は浸透速度の低い圃場で高い(表2)。この結果は、浸透速度の低い、すなわち、降水の地表面流出の多い圃場で収量が低下する原因は、土壌水分の不足でなく、地表面流出による肥料成分の不足にあることを示す。また、緩効的な施肥管理が対策として有効なことを示唆する。
  6. マリ共和国南部の集落Niessoumana、Diouでは、それぞれ12%の圃場で浸透速度が0.05mm/sec以下である(図2)。ここで、肥料成分の地表面流出が収量を低下させているとみられる。

[成果の活用面・留意点]
  1. マリ共和国において緩効性肥料の利用は経済的に困難である。分施、有機質肥料の利用、慣行の表層施肥から土中施肥への切り替え等、緩効的な施肥管理による効果が期待できる。
  2. 圃場への地表面流出水の流れ込みを防ぎ、圃場からの水の表面流出を防ぐための畦畔、圃場周辺の排水路の整備により、増収効果が期待できる。
  3. 今後の研究として、浸透速度が高い圃場で収量が低下する一因として、肥料成分の下方流出の影響を解明する必要がある。

[具体的データ]

図1
表1
図2表2

 


[その他]
研究課題: 有効降水量に及ぼす土壌の浸透特性の影響解析
予算区分: 文科省〔気象変動〕、基盤〔FSR、理事長奨励〕
研究期間: 2000〜2002年度、2003年度
研究担当者: 小沢聖・J.S.Caldwell(JIRCAS)・佐々木香織・管野浩光(東北農研)・M.D.Doumbia・A.Yorote・A.Berthe(マリ農村経済研究所)
発表論文等:
  1. Caldwell J. S., Kannno H., Berthe A., Yorote A., Sasaki K., Doumbia M., Ozawa K. and Sakurai S. (2002): Climate Variability in Cereal-based Cropping Systems in Mari, West Africa, Farming Japan 36, 35-41
  2. Ozawa K. and Doumbia M., Low infiltration decreases the availability of precipitation in Mali. In Eds. Caldwell J. S. et.al Supporting Farmer Dcisions in Response to Climatic Risk. JIRCAS Working Report 49, 38-44

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