TOP >アーカイブス(刊行物:国際農林水産業研究成果情報第15号)

国際農林水産業研究成果情報 第15号 【2007(平成19年度)】

アフリカイネ、アジアイネおよび種間雑種の短期冠水耐性(PDF232KB)

〔 要約 〕ギニアで広範囲なイネ遺伝資源の短期冠水反応性を評価した。冠水の耐性向上には、冠水中の草丈伸長抑制地上部乾物増加に加え、退水後の倒伏抑制が重要である。アフリカイネの大部分は、冠水感受性であったが、Saligbeliは他のアフリカイネや冠水耐性(Sub-1)品種とは異なる冠水反応性を示した。
所属 国際農林水産業研究センター・生産環境領域 連絡先 029 (838) 6355
専門
栽培
対象
稲類
分類
研究

[背景・ねらい]

西アフリカに位置するギニアでは、海岸沿岸地域や河川流域に広がる天水田において、豪雨による急激な水位上昇に伴う数日から数週間の短期的な冠水がしばしば発生する。この短期冠水は、特に播種後のイネの生育に大きな影響を及ぼしている。ここで言う冠水とは、植物体の一部あるいは全部が水に被ることを指し示している。イネの短期冠水耐性とは、約10日間の完全冠水に対して十分な生存を維持できる性質を言う。通常に生育するイネは通導組織によって地上部から根への酸素供給をおこなうが、植物体が完全冠水すると酸素供給に障害が生じ、冠水中の植物体の酸素代謝が制限される。したがって、短期冠水常襲地域においては、完全冠水に対して耐性機能を持ったイネ品種の評価と導入が重要である。そこで、本研究は、対象地域における洪水等過剰水ストレスに対するイネの冠水耐性の向上を目的に、ギニアにおいて2年間にわたりポット(コンクリートタンク)および圃場において、最も冠水の被害が大きい育苗期のイネの短期冠水耐性を評価し、その耐性向上に密接に関連する重要形質の特定を行う。


[成果の概要・特徴]
  1. 播種後15日目のイネの幼植物体を7日間完全冠水すると、ポットおよび圃場試験ともに、冠水中の草丈の伸長量と冠水解除後14日間の地上部乾物重増加比(冠水区/非冠水区)の間には、有意な負の相関関係が示される(図1)。
  2. IRRI(国際稲研究所)が同定した冠水耐性遺伝子Sub-1を有する品種(以降、冠水耐性品種と呼ぶ)については、冠水中の地上部伸長量は極めて小さく、冠水解除後の地上部乾物重増加比(冠水区/非冠水区)は大きい(図1、2)。
  3. 大部分のアフリカイネ(Oryza glaberrima Steud.)については、冠水中の地上部伸長量は大きく、冠水解除後の地上部乾物重増加比(冠水区/非冠水区)は小さい (図1、2)。一方、アフリカイネのSaligbeliは、冠水中の地上部伸長量および冠水解除後の地上部乾物重増加比(冠水区/非冠水区)ともに大きい。
  4. イネの短期冠水耐性向上には、完全冠水中の低酸素の嫌気的条件から、退水後の酸素代謝が可能な好気的条件へ変化する環境適応力が必要である。短期冠水に対するイネの反応性の指標(変数)は、@地上部伸長量、A倒伏程度、B地上部乾物増加量である(図3)。
  5. 第1主成分(I)と第2主成分(II)で、これら3つ指標(変数)が持っている情報の約74%の説明が可能で、第1主成分は総合的な短期冠水耐性を示している(図3)。
  6. ギニアにおけるイネの育苗期の短期冠水に対して、冠水耐性品種は高い耐性を示し、Saligbeliを除くアフリカイネは感受性を示す (図4)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 冠水耐性品種やSaligbeliについて、物質生産能力等の生理的特徴について明らかにすることは、水ストレス耐性機能の詳細な解明につながる。
  2. 特定した指標を短期冠水耐性の簡易検定法に適用できる。

[具体的データ]

図1 冠水中の地上部伸長量と冠水解除後の地上部乾物

図1 冠水中の地上部伸長量と冠水解除後の地上部乾物 増加量比の関係

図2 冠水解除後の冠水耐性品種とアフリカイネの生育

図2 冠水解除後の冠水耐性品種とアフリカイネの生育
冠水処理は7日間

図3 短期冠水耐性に関連する主成分の変数プロット

図3 短期冠水耐性に関連する主成分の変数プロット

図4主成分分析による短期冠水耐性評価

図4主成分分析による短期冠水耐性評価
シンボルは図1に同じ.


[その他]
研究課題: アフリカにおけるイネの冠水耐性の向上
中課題番号: A-1)-(2)
予算区分: 交付金〔耐性ネリカ〕
研究期間:
2007年度(2006〜2010年度)
研究担当者:
坂上潤一
発表論文等:
  1. Kawano, N., Ito, O., and Sakagami, J-I.(2008) Flash flooding resistance of rice genotypes of Oryza sativa L.,O. glaberrima Steud., and Interspecific hybridization progeny. Environmental and Experimental Botany. 63,9-18.
  2. 河野尚由・坂上潤一(2008) 西アフリカにおけるイネの冠水害 . 国際農業研究情報、 No.57, 25-36.
  3. Kawano, N., Ito, O., and Sakagami, J-I.(2007) Morphological and physiological responses of rice seedling to flash floods. Abstract of 9th Conference of the International Society for Plant Anaerobiosis, 27.
  4. Kawano, N., Ito, O., and Sakagami, J-I.(2006) Flash flooding resistance of rice genotypes of Oryza sativa L.,O. glaberrima Steud., and Interspecific hybridization progeny. In Africa Rice Congress.
  5. 河野尚由、小林伸哉、福田善通、坂上潤一(2006) Oryza sativa L.、O. glaberrima Steud. およびその種間交雑種のFlash flooding耐性.日本作物学会講演紀事別号 Vol221, 206-207.

前のページ

次のページ