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国際農林水産業研究成果情報 第17号 【2009(平成21年度)】

バイオマスの糖化に利用できる新規なキシラン分解酵素複合体(PDF238KB)

〔 要約 〕通性嫌気性細菌Paenibacillus curdlanolyticus B-6は、強力なキシラン分解活性を有する新規の酵素複合体(約1,450 kDa)を生成する。この複合体は、骨格蛋白質(280 kDa, 260 kDa)及び4種類のキシラナーゼ活性を有するサブユニットにより構成され、キシランを含むバイオマスの糖化に利用できる
キーワード 酵素複合体、キシラナーゼ、キシラン分解酵素、バイオマス、ザイラノソーム
所属 国際農林水産業研究センター 利用加工領域 分類
研究B

[背景・ねらい]

稲ワラ等のセルロース系バイオマスの酵素糖化において、主要構成成分であるセルロース、ヘミセルロース(特にキシラン)を如何に効率的に分解できるかは重要な技術課題である。パイナップル残渣処理槽から分離された通性嫌気性細菌Paenibacillus curdlanolyticus B-6は、キシラン高分解活性を持つが、その詳細は不明であった。本菌からヘミセルラーゼ高活性画分を精製、遺伝子解析した結果、キシラン分解酵素複合体を構成し、構造的に新規な酵素複合体であることを見出した。今迄、一部の嫌気性微生物のみセルロース・ヘミセルロース分解に関する酵素複合体(セルロソーム)の存在が認められていたが、通性嫌気性細菌でも新規な酵素複合体(ザイラノソームと仮称)を生産できることを確認した。


[成果の内容・特徴]

  1. パイナップル残渣処理槽より分離された通性嫌気性菌P. curdlanolyticus B-6は高いヘミセルロース分解能を持ち、その活性は高分子量画分に存在する(図1、PeakT-V)。
  2. ゲルろ過により分取した約1,450 kDaの画分を、イオン交換体および疎水性クロマトグラフィーにより精製しキシラン分解活性を有する巨大タンパク質を単離した(表)。
  3. この巨大タンパク質はNative-PAGEで単一バンドを与えるがSDS-PAGEでは6種のバンドを形成し、活性染色の結果から、約280 kDa(S1)及び260 kDa(S2)の骨格蛋白質とキシラナーゼ活性を示す3種類のサブユニット(S7, S8, S11)及び、エンドグルカナーゼサブユニット(S10)により、構成される酵素複合体であることが明らかになった(図2)。S7及びS8サブユニットはキシラナーゼだけでなくエンドグルカナーゼ活性も示す。
  4. 主要な40 kDaのキシラナーゼサブユニットS11(Xyn11A;GenBank FJ956758)は、糖質分解酵素(GH)ファミリー11、リンカー様アミノ酸配列、及び糖質結合モジュール(CBM)ファミリー36を含む2つの機能ドメインがあり、セルロソームサブユニットに必須のドックリン類似構造は認められなかった(図3)。
  5. 以上のことから、通性嫌気性細菌P. curdlanolyticus B-6はセルロソームとは異なる高いキシラン分解活性を有する新規の酵素複合体(ザイラノソームと仮称)を生産することが明らかである。

[成果の活用面・留意点]
  1. キシランを基質にした場合、本菌のザイラノソームにより得られる最終産物はキシロビオース及びキシロオリゴ糖であるため、機能性キシロオリゴ糖として利用することができる。
  2. Clostridium属細菌が生産するセルロソームと併用することによって、キシランを多量に含むバイオマスの効率的糖化が実現できる可能性がある。


[具体的データ]


図1 P. curdlanolyticus B-6培養液のセルロース吸着画分からのゲルろ過クロマトグラフィー

表 ゲルろ過1,450 kDa画分の酵素活性


図2 精製したP. curdlanolyticus B-6のザイラノソーム

Mは分子量マーカー、1,Native-PAGE、2,SDS-PAGE、3,キシラナーゼ活性染色、4,エンドグルカナーゼ活性染色。S1,S2, S7, S8, S10, S11は確認された酵素サブユニットを示している。

図3 P. curdlanolyticus B-6のザイラノソームの主要酵素サブユニットXyn11A(S11)のタンパク質構造モデル
N末端側から糖質分解酵素ファミリー11 (GH11)、アスパラギン酸・セリンリッチなリンカー様配列 (Linker)、C末端側に糖質結合モジュールファミリー36 (CBM36)の構造を有する。黄色はβシート構造、赤色はαへリックス構造を示している。


[その他]
研究課題: 東南アジア・バイオマス
中課題番号: A-1)-(4)
予算区分: 交付金[アジアバイオマス]
研究期間:
2009年度(2006〜2010年度)
研究担当者:
小杉昭彦・Patthra Pason(キングモンクット工科大学)・森隆
発表論文等:
  1. Pason et al. (2009) Appl Microbiol Biotechnol. 85:573-580

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