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国際農林水産業研究成果情報 第18号 【2010(平成22年度)】

カビ酵素に代わり得るセルロース系バイオマス分解酵素の開発(PDF283KB)

〔 要約 〕好熱嫌気性細菌由来のセルロソームとβグルコシダーゼの組み合わせで、セルロース分解能を飛躍的に向上できる。本酵素の組み合わせによりアンモニア処理稲わらを91%の高効率で分解でき、世界のバイオマス分解の主流技術であるカビ酵素に代わり得る糖化技術となる。
キーワード セルロソーム、βグルコシダーゼ、セルロース、稲わら、好熱嫌気性細菌
所属 国際農林水産業研究センター 利用加工領域 分類
技術B

[背景・ねらい]

好熱嫌気性細菌Clostridium thermocellumが生成するセルラーゼ/ヘミセルラーゼ複合体(セルロソーム)は、非常に高いセルロース分解能を有する。本研究では既知菌株であるC. thermocellum ATCC27405よりも高いセルロース分解活性を有するセルロソーム生産菌を共同研究機関であるキングモンクット工科大学トンブリ校(KMUTT)の協力を得てタイの自然環境下から分離し、この細菌が生産するセルロソームとβグルコシダーゼとを組み合わせることにより、セルロソームの最終分解産物であるセロビオースによる活性阻害を回避した、高効率なセルロース分解酵素系を開発する。


[成果の内容・特徴]
  1. バガスペーパー残渣汚泥槽から分離されたC. thermocellum S14は既知菌株C. thermocellum ATCC27405よりも3倍高いセルロース分解能を有し、アルカリ及びより高温環境下で生育する(図1及び表1)。
  2. C. thermocellum S14からのセルロソームと好熱嫌気性細菌Thermoanaerobacter brockiiからのβグルコシダーゼを組み合わせることによりセルロソームのセルロース分解能力を飛躍的に向上させ、高濃度(10%)の結晶性セルロースでも完全分解が可能である(図2)。
  3. 脱リグニンのためにアンモニア浸漬処理(28%アンモニア水、60°C、7日間)した稲わらを用いた糖化試験では、カビ酵素では63%の糖化効率であるが、本酵素ミックスでは91%の高効率で分解することが可能である(図3)。
  4. 以上のことから、好熱性嫌気性細菌由来のセルロソームとβグルコシダーゼの組み合わせは世界のバイオマス分解技術の主流であるカビ酵素に代わり得る糖化技術と考えられる。

[成果の活用面・留意点]
  1. C. thermocellumT. brockiiの共培養によりセルロソームとβグルコシダーゼを同時に調製することができる。
  2. セルロソームはセルロース結合能を有し、植物バイオマス分解に必要な多種類の酵素が一つのセットとして働いているため、反応後に基質を添加し酵素を基質に吸着させることにより回収し再利用することが可能である。
  3. C. thermocellum S14株は(独)製品評価技術基盤機構に特許微生物(NITE P-627)として寄託されている。

[具体的データ]

図1 C. thermocellum S14の電子顕微鏡像

表1 C. thermocellum S14の生育特徴とセルロソームの酵素活性

図2 セルロソームとT. brockii 由来のβグルコシダーゼの併用による高濃度結晶セルロース分解 カビ酵素の場合、Aspergillus niger のβグルコシダーゼを併用した。酵素濃度はセルロース3%と6%の時は1g基質あたり1mg、また10%の時は2mg使用した。

 


図3 セルロソームとT. brockii 由来βグルコシダーゼ酵素ミックスを用いた稲わら糖化 (a);アンモニア浸漬処理稲わらの糖化。(b);稲わら糖化後のSEM画像。酵素はそれぞれ1g基質あたり2mg使用した。


[その他]
研究課題: 東南アジア・バイオマス
中課題番号: A-1)-(4)
予算区分: 運営費交付金[アジアバイオマス]
農林水産省委託プロ[酵素複合体]
研究期間:
2006〜2010年度
研究担当者:
小杉昭彦・Chakrit Tachaapaikoon(キングモンクット工科大学)・Rattiya Waeonukul(キングモンクット工科大学)・森隆
発表論文等:
  1. 小杉ら、特願2008-222957「クロストリジウム属菌並びにセルロソームを含むセルラーゼ及びヘミセルラーゼの製造方法」
  2. 小杉ら、特願2009-277079「クロストリジウム微生物の培養方法及びセルロソームの製造方法」

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