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「食料安定生産」
熱帯等の不安定環境下における農作物等の生産性向上・安定生産技術の開発

 JIRCASの中期計画に示されている『熱帯等の不安定環境下における農作物等の生産性向上・安定生産技術の開発』に対応するのが、食料安定生産プログラムです。
開発途上地域において依然として深刻な状況にある栄養不良人口・飢餓人口の削減に貢献し、我が国および世界全体の食料安全保障に資するため、熱帯等に広がる条件不利地域において、我が国が比較優位性を持つ研究分野を中心に、現地の研究機関、国際研究機関等との共同研究により、生産性向上と安定生産を図るための技術を開発することが、プログラムの目標です。
「国連ミレニアム開発目標」が目指す栄養不良や飢餓の削減への貢献はもとより、近年の穀物価格の高騰などの状況に対応するためにも、「世界的な食料問題解決を通じた我が国の食料安定供給に寄与していく」(JIRCAS中期計画前文より)ことにより我が国の農林水産政策へ貢献するという視点が重要である、と認識しています。
ここでは、食料安定生産プログラムの中心となるプロジェクト「アフリカにおけるコメ生産向上のための技術開発」、その他のプロジェクトについて概要を説明します。

「食料安定生産」プログラム 新着情報 New!!

プロジェクト「アフリカにおけるコメ生産向上のための技術開発」

 アフリカでは、経済発展の遅れや、高い人口増加率により貧困や食料不足が発生しています。コメ生産量の増加は、コメ消費量の急激な増加に追いついておらず、アジア、北米等からの輸入量が年々拡大しています。一方、未だに農家のコメ作りの経験や知識は十分ではなく、農家の営農活動を支える研究・普及体制も不十分で、コメの生産技術の進歩やコメ生産量の増加は顕著ではありません。一方、我が国が主導するアフリカ開発会議(TICAD IV)の横浜宣言(平成20年)で、「今後10年間でアフリカの米生産を倍増させる」ことが示され、この実現にあたり、「アフリカ稲作振興のための共同体(CARD)」が設立され、JIRCASは当初から運営委員会メンバーとして参加しています。
  本プロジェクトは、3つの課題から構成され、それぞれ、以下の研究を行います。

  1. 安定生産可能でアフリカ向けの有望な水稲・陸稲遺伝資源の評価・改良等により新しいイネ品種を開発し、いもち病やリン酸肥料不足等によるコメ生産量の損失軽減と増収を図れることを示します。
  2. ライフサイクルコストが低廉な水田基盤整備の技術を開発するとともに、アフリカの条件に適したアジア型水田基盤整備および水稲栽培モデルを開発し、普通の農家でも畦で区画し用水を蓄える「アジア型水田」が比較的容易に整備でき、水稲栽培が行えるようにします(図1,2)。
  3. これまで稲作に未利用だった氾濫(はんらん)低湿地においては、河川流域の稲作に効果的な生産技術を開発し、稲作可能地域の面的拡大を図ります(図3)。

 また、JIRCAS による研究成果が、関係国政府・国際機関による調査・研究および普及の推進等に確実に活用されるよう、共同研究あるいは協力の体制の構築を進めています。アフリカにおけるコメの倍増を目指すCARD の目標が達成されることが、本プロジェクトの目標です。

図1

図1 牛を用いた代掻き・均平作業(エチオピア)

  図2

図2 耕耘機を用いた代掻き・均平作業(ガーナ)

  図3

図3 氾濫低湿地のイネ(雨期には1mぐらいの水深になる)(ガーナ)

プロジェクト「環境ストレス耐性作物の作出技術の開発」

 干ばつ等により生じる不良または不安定な環境下における作物安定生産を図るため、本プロジェクトでは開発途上地域向けの作物開発のための分子育種技術開発を行います。ダイズやトウモロコシ等の作物において環境ストレス耐性作物作出のための新たな有用遺伝子やプロモーターを選抜します。また、DREB遺伝子等これまでにJIRCASが発見した有用遺伝子の利用については、イネでは国際研究機関等との協力で圃場レベルで耐乾性の育種素材を選抜し、ダイズではブラジルにおいて圃場レベルで耐乾性の育種素材を選抜します。

プロジェクト「食料供給安定・生産向上を目指した畑作物育種技術の開発」

 ダイズ・コムギ等の主要畑作物の生産阻害要因に対して生産性の確保・向上を目指した効率的な優良品種育種技術および育種素材を開発します。これらの作物は我が国が輸入に頼っており、我が国への食料安定供給にも関わるテーマです。生物的ストレスについては、近年南米での発生が問題となっているダイズさび病に抵抗性の実用的品種をブラジル、アルゼンチン、パラグアイにおいて開発します。非生物的ストレスについては、ダイズの耐塩性、コムギの耐乾性等の育種素材の評価・選抜を行います(図4)。

図4
図4 耐塩性のダイズ(右)

プロジェクト「熱帯性畑作物遺伝資源の多様性評価および利用技術の開発」

 熱帯性畑作物は、食用、飼料、加工食品、工業用原材料などの多面的役割、限界環境への順応性が高い、地域農業の多様性の維持のための役割、地域レベルの食料安全保障に貢献、等の特徴があります。東南アジアの高バイオマス生産性作物であるサトウキビでは糖質および繊維質の安定多収生産を目指し高バイオマス生産性作物の育種素材を開発、西アフリカの伝統的な主食作物のヤムでは品種改良に必要とされるゲノム情報等の科学的情報の整備、西アフリカの重要なタンパク源のササゲでは栄養価が高く消費者嗜好性に合った品種開発のための基盤情報・育種素材の整備、を目標とします(図5,図6)。

図5
図5 アフリカのヤムイモ

図6
図6 アフリカのササゲ

プロジェクト「環境共生型稲作技術の創生」

 不良な環境条件下でも安定して高生産性を確保できる、低投入・環境調和型のイネ品種と栽培技術をアジアにおいて開発し、「アジア型稲作の改良」を通じて前述のアフリカでの稲作振興プロジェクトに貢献していきます。これまでに築いたイネいもち病抵抗性に関するネットワーク研究を基盤とした実用的品種の開発、リン酸欠乏等のストレス耐性に関する遺伝要因の解明と育種素材の実証試験、加えて低投入条件下での新たな多収性理論の構築に取り組みます。

プロジェクト「開発途上地域における農畜産物安定生産のための総合的病害虫防除技術の開発」

 対象病害虫のリスク評価、個別の防除技術開発、開発した技術の経営的評価を組み合わせて総合的病害虫防除技術の開発に取り組み、農畜産物の安定生産に貢献します。具体的には、JIRCASがタイで開発した高バイオマスサトウキビ品種の生産性向上のために必要な「株出し」という栽培体系を、白葉病等の病害虫が阻害している状況を克服することが目標です。

関連課題: 農地塩害対策調査(〜平成24年度)

 中央アジアの乾燥・半乾燥地域では、高い地下水位に起因する塩類集積が綿花、コムギ等の農業生産に影響を及ぼしています。この塩害の軽減を図るため、土壌・水のモニタリング、灌漑・排水及び栽培技術に関する研究を実施しています。

プログラムの各年度の実績報告

開催シンポジウム・セミナー報告

プログラム紹介ポスター

  • 「平成26年度一般公開」で展示したプログラム紹介のポスター (日本語)
  • at Third Africa Rice Congress, 21-24 October 2013, Yaounde, Cameroon (英語)
  • at TICAD V , 1-3 June 2013, Yokohama, Japan (英語)

平成26年度の研究成果(国際農林水産業研究成果情報平成26年度(第22号))より)