TOP > 研究プログラム > :「食料安定生産」平成24年度実績報告 

「食料安定生産」 平成24年度実績報告

研究プログラム B : 熱帯等の不安定環境下における農作物等の生産性向上・安定生産技術の開発
(食料安定生産プログラム

(プログラムの概要)

概要図

本プログラムでは、イネ、ダイズ・コムギ、熱帯畑作物等、熱帯・亜熱帯の主要農作物の生産性向上と安定生産を実現するための技術開発を行い、開発途上地域での食料安定供給と農家経済の安定を実現し、栄養不良・飢餓人口の削減、我が国及び世界の食料安全保障に貢献する。

イネにおいては、「アフリカ稲作振興のための共同体」(CARD)の目標であるアフリカにおけるコメ増産計画の実現のため、アジアでの稲作の研究経験や成果を生かし、CARD の「栽培環境別アプローチ」における、栽培環境に応じた適正品種の選定・開発、天水低湿地での稲作開発モデルの確立のための基盤整備手法開発、低利用地での栽培技術の改善を通じた栽培面積の拡大、に貢献する研究開発を、本プログラムの旗艦プロジェクトとして実施する(研究実施国等(以下同様):ガーナ、AfricaRice)。また、アジアにおいては、第2 期中期計画で築いたいもち病研究ネットワーク等を活用した低投入・環境調和型の育種素材開発を加速し、優れた素材の評価およびアフリカへの適用に努める(アジア各国、IRRI)。加えて、開発途上地域向けの耐乾性イネ開発のための分子育種技術を開発する(IRRI、CIAT)。

ダイズにおいては、南米の主要生産阻害要因であるさび病に抵抗性の品種開発(パラグアイ、アルゼンチン、ブラジル)を行うとともに、異なる耐性集積による高度塩害耐性系統を開発する。また、ダイズ・コムギの耐乾性向上のための分子育種技術開発を進める(ブラジル、CIMMYT)。灌漑排水に係る水管理を中心に、コムギ、綿花等を栽培する農地での塩害対策ガイドラインを作成する(ウズベキスタン)。

アフリカの伝統的作物であるヤムイモとササゲについては、ヤムの品種改良に必要とされる科学的情報を集積し多様性解析および育種素材選抜手法の実用化を図るとともに、ササゲの栄養価および品質向上を目的とする育種のための基盤情報を整備し付加価値化を目的とした開発戦略を提言する(IITA)。

熱帯果樹については、石垣の研究拠点の立地条件を生かし、保有する果樹遺伝資源の来歴情報・特性評価データの整備および遺伝的多様性の評価を通して、遺伝資源の保存・利用システム構築を図る。

サトウキビでは、近縁遺伝資源を利用してそれらの地域への適応性が高い有用な育種素材を開発するとともに、低肥沃土で干ばつが問題となる地域での持続的栽培を可能にするため白葉病を抑制し、株出し年限を延長する技術を開発する (タイ)。

(平成24年度成果の概要)

  • DNA マーカーを用いた陸稲ネリカ(New Rice for Africa: NERICA)18 品種のゲノム染色体構成解析に基づいて選定されたDNA マーカーは、ネリカ18 品種を11 の単独品種及び3つの品種グループとして識別・分類できた。
  • 天水依存度の高いアフリカの稲作においては、乾燥抵抗性が付与すべき重要形質とされる。シロイヌナズナ由来の転写因子DREB1C を発現させた陸稲ネリカ(NERICA1)は、乾燥条件下における生存性、地上乾物重、穎花数および稔実数が向上した。
  • 平成23年度主要普及成果である「稲作技術マニュアル」の仏語版を作成した。仏語訳は、AfricaRice Center と連携して行い、仏語の専門用語について精緻な選定ができた。
  • アフリカにおける水田は土水路が多い。土水路は自然災害に対し脆弱であるため、気象、地形、土壌などの条件に応じた様々な対策が必要である。土水路の機能を評価するために必要な動水勾配を簡易に測定する方法を考案した。
  • イネ生産に利用されていないガーナ北部の氾濫低湿地において、土壌炭素量の空間分布を「水源(河川と湖沼)からの距離」の対数関数として推定するモデル式と欠乏する硫黄成分の施用を組み合わせることにより、窒素供給力の高い地点の選定とイネ生産に対する効率的な窒素利用が可能となった。
  • インド型イネ品種カサラスに由来するタンパク質キナーゼPSTOL1 遺伝子は、これまで見つけられていたリン酸欠乏耐性に関する量的形質遺伝子座Pup1 内にあり、冠根の発生と根の総量を増加させることにより耐性を向上させることを明らかにした。
  • DREB 遺伝子等の環境ストレス耐性に関与する遺伝子を水稲・陸稲4品種及びコムギ1品種に導入した系統について、乾燥ストレス下の隔離圃場等で収量性を評価した結果、45系統が乾燥耐性について有望と認められた。
  • イネのOsPIL1は、細胞壁関連遺伝子の発現を制御して植物の成長を促進するbHLH 型転写因子である。この遺伝子の発現は乾燥ストレス条件下において強く抑制されることから、ストレス下のイネの生長を制御する重要な因子と考えられた。
  • ダイズの耐塩性候補遺伝子を導入した形質転換ダイズT2 世代の遺伝子発現と耐塩性程度から、この遺伝子はダイズ耐塩性の原因遺伝子であることが確認された。
  • ダイズさび病菌に対する16のダイズ判別品種の反応を抵抗性型、中間型、感受性型に分類することで、南米のダイズさび病菌の病原性を評価した。2007年〜2010年の3ダイズ作期に採集したブラジル、アルゼンチン、及びパラグアイのダイズさび病菌は高い病原性変異を有し、同一作期中に各国で採集した菌の病原性は、パラグアイの1 組を除き全て異なった。南米各国の同一採集地において、作期ごとに異なる病原性を有するダイズさび病菌が検出された。
  • 地下水に含まれる塩類に起因する塩害が深刻な中央アジアにおいて、農家が自ら実施できる圃場レベルの塩害対策技術を実証し、これを塩害軽減対策ガイドラインとして取りまとめた。ガイドラインは、調査地域の農家を対象としたワークショップ、行政・研究機関関係者を対象としたセミナーを通じて配布した。
  • アフリカで栽培されているヤム5 種(D. routundata, D. cayenensis, D. alata, D. dumetorum, D.bulbifera)30系統の凍結乾燥イモ試料から澱粉を精製し、物理化学特性を分析した。とくに、糊化特性パターンに品種間差がみられ、アフリカで一般的に良食味といわれる品種の澱粉のピーク粘度および最終粘度が、貧食味の品種より高いことが示された。
  • ササゲ子実の栄養成分および品質特性を詳細に評価するために選定した特徴的な20系統の子実粉の糊化特性パターンは4タイプに分類でき、加工特性が系統間で大きく異なることを明らかにした。また、これら20系統の食味官能評価試験の結果、茹マメとしたササゲの食味にも大きな系統間差があることを確認し、特に甘みが強い2系統を選抜した。
  • バンレイシ属(チェリモヤ・アテモヤ)品種の特性調査およびDNA 多様性解析を行い、種・品種の分類に有効なDNA 情報を得た。
  • タイにおいて、属間雑種(5SrDNA マーカーにより交雑が確認済みの系統)の形態特性を調査し、葉基部の毛群(サトウキビになく、エリアンサスにある)が全雑種個体にあることを明らかにした。

(主要成果・主要実績)

中心的な研究課題 (アフリカ稲作振興プロジェクト) の主要成果

  1. 西アフリカ産イネいもち病菌菌系のクラスター分析による分類で、3種の菌系グループの頻度がほぼ同じように分布しており、他のアジア地域の菌系とは異なることを明らかにした。
  2. アフリカ向けイネ遺伝資源51品種についてPup1 座の遺伝子型を調査したところ、22品種がKasalath 型の遺伝子を、11品種がグラベリマ種型の遺伝子をそれぞれ持ち、18品種がPup1 遺伝子を全く持っていないことが明らかとなった。
  3. [研究成果情報: 陸稲ネリカ品種を識別・分類できるDNAマーカー] DNA マーカーを用いた陸稲ネリカ(New Rice for Africa: NERICA)18品種のゲノム染色体構成解析に基づいて選定されたDNAマーカーは、ネリカ18品種を11の単独品種及び3つの品種グループとして識別・分類できた。
  4. [研究成果情報:DREB1C遺伝子の発現による陸稲ネリカの乾燥抵抗性の向上] シロイヌナズナ由来の転写因子DREB1C を発現させた陸稲ネリカ(NERICA1)は、乾燥条件下における生存性、地上乾物重、穎花数および稔実数が向上した。(農水省「新農業展開ゲノムDREB プロジェクト」)
  5. 平成23年度主要普及成果である「稲作技術マニュアル」の仏語版を作成した。仏語訳は、Africa Rice Center と連携して行い、仏語の専門用語について精緻な選定ができた。また同成果のフォローアップの一環として、コメに関するバリューチェーンに係る現況調査を実施し、ガーナ国クマシ市周辺のコメ流通には仲買人が大きな役割を果たしており、かつ複雑な仕組みとなっていること、又コメの品質が必ずしも価格に反映されていないことを明らかにした。
  6. [研究成果情報: レーザー距離計を用いた土水路の動水勾配の計測方法] 開発途上地域の水田地帯では土水路が多いことから、土水路の機能を評価するために必要な動水勾配を簡易に測定する方法を考案した。
  7. ガーナの赤道森林帯の水田稲作において、鶏糞などの在来資材主体の有機物の施用によりイネ収量が増加し、高価な化学肥料を代替できることがわかった。これらを組み合わせることによりイネ収量がさらに増加することから、化学肥料の施用が可能である場合においては、有機物資材と化学肥料の組み合わせが推奨される。 (農水省 土壌肥沃度改善検討調査)
  8. データベースPlants in lowland of West Africa(英文)の更新(90種から160種へ)、及び既存の収録分のうち 3種について改訂を行いJIRCAS ホームページで公開した。また、日本語版「西アフリカのサバンナ低湿地帯の雑草データベース」を作成、JIRCAS ホームページで新規に公開した。
  9. イネの種籾に吸水と乾燥の処理を連続的に施すプライミング処理によって発芽速度が加速し、それに伴う出芽速度の増大が乾物生産を伴う速やかな苗立ちを可能にすることが明らかとなった。
  10. ガーナ、タマレの西方の4カ所において、肥料の三要素全てを含む水酸化リン酸塩鉱物を採取した。その肥料化に向けては、@粉砕、篩いをかけた後に摩砕、A母岩の石英のみを薬品で溶解させ高純度にした後に摩砕、B対象の鉱物のみを酸で溶解させ再結晶化し高純度にした後に摩砕、のいずれの方法においても、現地で採取したリン酸塩鉱物を細粒化・非晶化できることが明らかになった。
  11. [研究成果情報: ガーナ北部の氾濫低湿地における水稲作導入に向けた湛水可能性の評価] マイクロ波衛星画像が捉えた冠水域の地理的分布特性に基づいて湛水可能性を評価する手法は、天水による稲作に必要な湛水が期待できる場所の選定に役立ち、アフリカに広く分布する氾濫低湿地への稲作の導入に貢献する。
  12. [研究成果情報: ガーナ北部氾濫低湿地での稲作拡大に向けた土壌炭素分布と硫黄欠乏の解明]土壌炭素量の空間分布を「水源(河川と湖沼)からの距離」の対数関数として推定するモデル式と欠乏する硫黄成分の施用を組み合わせることにより、窒素供給力の高い地点の選定とイネ生産に対する効率的な窒素利用が可能となり、未利用の氾濫低湿地におけるイネ栽培面積の拡大に貢献できる。
  13. アフリカ稲作振興プロジェクトの主要な研究実施国であるガーナでは、今中期計画において他のプログラムのプロジェクトを含め、JIRCAS の多くの資源投入が予定されているので、平成24 年9月27日にJIRCAS の研究活動をまとめてガーナ国政府機関、カウンターパート研究機関、に説明するため、JIRCAS 研究成果発表会“Workshop on Collaborative Research Activities of JIRCAS in Ghana”を開催した。ガーナ国の行政機関、研究機関、及び在ガーナ国際機関からの参加者からの質問、議論が活発に行われ、今後のプロジェクト活動に貢献する意義のある会合であった。
  14. 「AfricaRice – JIRCAS Meeting 」(JIRCAS Day)が、Africa Rice Center で開催された「The 2012 AfricaRice Science Week and GRiSP-Africa Science Forum」の中で実施された。平成24年10月4〜5日に行われた本会合は、両機関のイネ研究関係者が参集し行われ、5日には、GRiSP Directorも参加した。これまで、アフリカ稲作振興プロジェクトでは、育種関係の課題のみで連携が取られていたが、今回のmeeting では、双方、栽培(agronomy)関係の研究紹介を行い、今後の同分野での連携強化を確認した。

その他のプロジェクトの主要成果

  1. イネいもち病ネットワーク研究で収集したいもち病菌1,824 菌系のデータをもとに、各地域間の差異を明らかにした。いもち病菌の多様性程度を比較したところ、日本は極めて多様性が少なく、中国雲南省、バングラデシュは他の地域に比べ高いことが明らかになった。
  2. イネいもち病ネットワーク研究参加国のいもち病菌菌系に関する解析結果に基づき、地域、採取イネ栽培生態型、病原性等を考慮し、いもち病菌菌系のコアセット200菌系以上の候補を選定し、かつこの中から標準判別いもち病菌菌系の選定のための病原性の再評価を開始した。バングラデシュ、中国、インドネシア、フィリピン、ベトナム、西アフリカ産の合計、73菌系について評価を終了した。
  3. JIRCAS が主催するイネいもち病ネットワークについては、IRRI が主催するTemperate Rice Research Consortium(TRRC)におけるいもち病研究との連携の要望がIRRI から寄せられ、2012年10月にJIRCAS とTRRC合同のワークショップを行い、その結果、従来JIRCAS のネットワークが研究対象としていなかった温帯地域のトルコ、ロシア、ネパール、ブータンなどから新たな研究支援、材料提供の要請があり対応を開始した。
  4. インド型品種IR64 の遺伝的背景に染色体断片を挿入した系統群(IR64INLs:国際稲研究所(IRRI)との共同開発)334系統を、JIRCAS の陸畑と灌漑水田で栽培した乾物生産を評価し、IR64 よりも明らかに高い生産性を示す系統、あるいはそれらの系統をもとに育成した準同質遺伝子系統群の中に、地表根(上根)の多い系統を見出した。
  5. [研究成果情報:在来イネ由来のPSTOL1遺伝子はリン酸欠乏耐性を向上させる] インド型イネ品種カサラスに由来するタンパク質キナーゼPSTOL1 遺伝子は、これまで見つけられていたリン酸欠乏耐性に関する量的形質遺伝子座Pup1 内にあり、冠根の発生と根の総量を増加させることにより耐性が向上する。[プレスリリース、平成24年8月24日]
  6. 水稲・陸稲4 品種及びコムギ1 品種にDREB 遺伝子等の環境ストレス耐性に関与する遺伝子を導入した系統について、乾燥ストレス下の隔離圃場等で収量性を評価した結果、45 系統が乾燥耐性について有望と認められた。(農水省「新農業展開ゲノムDREB プロジェクト」)
  7. 国際シンポジウム「International Symposium on the Development of Abiotic Stress Tolerant Crops byDREB Genes」を平成24 年12月12日に開催し、「新農業展開ゲノムDREBプロジェクト」最終年にあたり、研究成果を課題担当研究機関の代表者から紹介した。さらに、今後の実用化に向けて、国際農業研究協議グループ(CGIAR)の研究センターで行われている乾燥耐性育種の研究状況等について講演してもらい、意見交換を行った。
  8. 環境ストレス耐性遺伝子やプロモーター等の組み合わせをブラジル農牧研究公社(Embrapa)に送付して形質転換ダイズを作製するとともに、Embrapaから輸入した形質転換ダイズを用いて遺伝子発現やストレス耐性等を解析・評価した。(JST/JICA「地球規模」プロジェクト)
  9. [研究成果情報:乾燥ストレス条件下でイネの生長を制御する遺伝子の同定] イネのOsPIL1 は、細胞壁関連遺伝子の発現を制御して植物の成長を促進するbHLH 型転写因子である。この遺伝子の発現は乾燥ストレス条件下において強く抑制されることから、ストレス下のイネの生長を制御する重要な因子と考えられた。[プレスリリース、平成24年9月11日]
  10. ダイズの環境ストレス応答性プロモーターを単離、解析する一方で、ダイズの環境ストレス耐性関連転写因子の機能解析を行い、調節機能を明らかにした。
  11. 種々の品種のトウモロコシ等の有用遺伝子及びプロモーターを単離するためのマイクロアレイを設計した。
  12. ダイズさび病抵抗性遺伝子Rpp24 及び5集積系統、並びにマーカーを利用した戻し交雑育種を継続し、パラグアイではAurora 等2品種を反復親とした戻し交配がBC5F1、他2品種で戻し交配がBC4F1世代まで完了した。アルゼンチンではINTA 育成の2品種を反復親としたF1 を作出した。これらの3遺伝子の集積による強い抵抗性は、遺伝的背景を変えても維持されていることを確認した。
  13. ダイズの耐塩性候補遺伝子を導入した形質転換ダイズT2 世代の遺伝子発現と耐塩性程度から、この遺伝子はダイズ耐塩性の原因遺伝子であることが確認された。
  14. ダイズのアルカリ塩耐性について高精度QTL 解析を行い、約3.3cM のQTL領域についての組換え固定系統の分析から、耐性遺伝子を第17染色体の204.2Kbの領域に特定した。
  15. [研究成果情報:南米におけるダイズさび病菌の病原性の変異] ダイズさび病菌に対する16のダイズ判別品種の反応を抵抗性型、中間型、感受性型に分類することで、南米のダイズさび病菌の病原性を評価した。2007年〜2010年の3ダイズ作期に採集したブラジル、アルゼンチン、及びパラグアイのダイズさび病菌は、高い病原性変異を有し、同一作期中に、各国で採集した菌の病原性は、パラグアイの1組を除き全て異なった。南米各国の同一採集地において、作期ごとに異なる病原性を有するダイズさび病菌が検出された。
  16. ウズベキスタンの塩害発生農地で、これまでに収集した根群分布、土壌水分特性等の諸元からワタの適正用水量を算定し、現状の末端圃場の使用水量が適正量の約2倍であることを明らかにした。また、サージフロー法、選択的畝間法、圃場均平の各種技術及びそれらの組合せにより、適正用水量に対しさらに48%まで節水できる可能性があることが示唆された。(農水省補助金「農地塩害対策調査」)
  17. [主要普及成果: 高地下水位条件下における圃場レベルの塩害軽減対策のガイドライン] 地下水に含まれる塩類に起因する塩害が深刻な中央アジアにおいて、農家が自ら実施できる圃場レベルの塩害対策技術を実証し、これを塩害軽減対策ガイドラインとして取りまとめた。ガイドラインは、調査地域の農家を対象としたワークショップ、行政・研究機関関係者を対象としたセミナーを通じて配布した。(農水省補助金「農地塩害対策調査」)
  18. ヤムゲノム配列の解読については、全ゲノムシーケンスによるドラフトゲノムを作成した。また、RAD(Restriction-site associated DNA)解析を用いた連鎖地図を作成した。
  19. 国際熱帯農業研究所(IITA)のギニアヤム遺伝資源コアコレクション候補541系統の形態形質、DNA(SSRマーカー)多型および倍数性を調査・解析し、IITA 遺伝資源が持つ変異を幅広く反映する107系統を選抜した。これらの系統セットを次年度以降の詳細な多様性解析の研究材料とする。
  20. アフリカで栽培されているヤム5種(D. routundata, D. cayenensis, D. alata, D. dumetorum,D.bulbifera)30系統の凍結乾燥イモ試料から澱粉を精製し、物理化学特性を分析した。とくに、糊化特性パターンに品種間差がみられ、アフリカで一般的に良食味といわれる品種の澱粉のピーク粘度および最終粘度が、貧食味の品種より高いことが示された。
  21. ナイジェリア北部および南部におけるササゲの市場調査を6月から毎月実施した。価格、流通経路、子実外観品質等の調査結果から、種子重、虫食い程度、子実色が消費者嗜好性として市場価格の決定に関わることが示唆された。
  22. ササゲ子実の栄養成分および品質特性を詳細に評価するために選定した特徴的な20系統の子実粉の糊化特性パターンは4タイプに分類でき、加工特性が系統間で大きく異なることを明らかにした。また、これら20系統の食味官能評価試験の結果、茹豆としたササゲの食味にも大きな系統間差があることを確認し、特に甘みが強い2系統を選抜した。
  23. 栽培環境の大きく異なる6環境(ナイジェリア(Ibadan、Kano)およびニジェール(Toumnia))における栽培試験を行い、ササゲ40系統の子実タンパク質含有量は15.1%〜24.7%の範囲にあり、系統によって環境の影響をあまり受けず安定して高タンパク含有量を示す系統があることを確認した。
  24. JIRCAS 国際ワークショップ「IITA-Japan collaboration on Research for Developmentfor Africa:Current Perspective and Beyond」を平成25年2月14日に開催した。現在、農林水産省、JIRCASおよび大学等の日本の機関がIITA と実施しているササゲとヤムのプロジェクトの現状を報告し、日本とIITA との協力強化およびアフリカの農業開発に連携・貢献する国際農業研究の在り方・展開方向について意見交換を行った。
  25. バンレイシ属(チェリモヤ・アテモヤ)品種の特性調査およびDNA 多様性解析を行い、種・品種の分類に有効なDNA 情報を得た。
  26. パッションフルーツ交配後代系統の果実品質調査を行い、候補系統の3年目における形質の安定性を確認した。また沖縄県農業研究センターとの間で研究協定を締結し、石垣および名護における候補系統の地域適応性試験を開始した。
  27. タイのエリアンサス遺伝資源150アクセッションについて、35形態特性および主要農業特性(新植、株出し1回目)の評価を完了した。
  28. タイにおいて、属間雑種(5SrDNA マーカーにより交雑が確認済みの系統)の形態特性を調査し、葉基部の毛群(サトウキビになく、エリアンサスにある)が全雑種個体にあることを明らかにした。交雑個体(F1)を簡便に選定する形態マーカーとして期待できる。
  29. タイ東北部の4地域における農家の疫学調査から、サトウキビの齢、周辺圃場の汚染度、栽培者の白葉病に関する知識、種茎の由来、が白葉病発病株の発生頻度に影響を及ぼしている可能性が高いことが推察された。個体ベースモデルのパラメータとして、タイワンマダラヨコバイとヤマトヨコバイの保毒率と飛翔距離の推定値を求めた。
  30. 白葉病の症状を示すサトウキビの葉から、16S-23SrDNA ITS領域およびSecA 遺伝子領域を対象とするPCRによって、目的とするバンドが増幅された。両領域の塩基配列の解析結果から、病原ファイトプラズマの遺伝的変異は小さい事を明らかにした。
  31. 3カ所の圃場で、サトウキビの被害程度と害虫の個体群密度を調査し、全ての月で被害茎率は2%以下と低かった。重要種と考えられたメイガ科4 種とヤガ科1 種のうち、メイガ科2種とヤガ科1 種だけが出現した。
  32. 製糖用サトウキビの収量が低い環境条件下で砂糖とエネルギーの同時増産を目指して第2期中期計画で開発した、サトウキビ3系統(野生種を用いた種間交雑の後代)について、既存の品種と比べ繊維分が高く、糖度が低いが、面積あたりの砂糖収量は多く、厳しい乾季を持つ東北タイでも、株出し多収栽培が可能であることを示すデータを取りまとめ、品種登録申請作業を進めている。
  33. [研究成果情報:ココヤシの重要害虫キムネクロナガハムシにおける2種の発見ココヤシの重要害虫キムネクロナガハムシにおける2種の発見] ココヤシを加害する害虫キムネクロナガハムシには、アジア型とパシフィック型の2つの隠蔽種が存在することを明らかにした。現在アジア型の防除のためにパプアニューギニアを起源とする寄生蜂Asecodes hispinarum が東南アジアに導入されているが、本種はパシフィック型の天敵であるため、寄生蜂Tetrastichus brontispae などアジア型の天敵の導入が東南アジアにおける生物的防除に望ましいことを示した。 (第2期中期計画「ココヤシ侵入害虫に対する生物的防除法の開発」プロジェクトの成果)

 

【24年度研究成果情報リスト(食料安定生産プログラム関係)】

〈主要普及成果〉

高地下水位条件下における圃場レベルの塩害軽減対策のガイドライン

〈その他の研究成果情報〉

南米におけるダイズさび病菌の病原性の変異

陸稲ネリカ品種を識別・分類できるDNAマーカー

DREB1C遺伝子の発現による陸稲ネリカの乾燥抵抗性の向上

レーザー距離計を用いた土水路の動水勾配の計測方法

ガーナ北部の氾濫低湿地における水稲作導入に向けた湛水可能性の評価

ガーナ北部氾濫低湿地での稲作拡大に向けた土壌炭素分布と硫黄欠乏の解明

乾燥ストレス条件下でイネの生長を制御する遺伝子の同定

在来イネ由来のPSTOL1遺伝子はリン酸欠乏耐性を向上させる

ココヤシの重要害虫キムネクロナガハムシにおける2種の発見