タイにおけるトウガラシ病虫害の生物的防除に関する既往研究

トウガラシ(Capsicum)は、タイにおける最も重要な園芸作物の一つですが、頻繁な農薬の使用にもかかわらず、病害虫による被害が深刻な問題となっています。このため、環境に配慮した、持続性のある総合防除(IPM)システムを開発することが求められています。

JIRCASとタイ農業局(DOA)は、平成26年度から、総合防除プロジェクトの中で、トウガラシの害虫を抑制するための環境に配慮した持続性のある技術開発を実施しています。この研究は、トウガラシが作付けられた圃場で、害虫の天敵を誘引する効果を持つコンパニオン植物を選択し、害虫を抑制する技術を開発することを目的としています。

ここでは、タイにおけるトウガラシの生物的防除に関する研究の現況を紹介するため、主にタイ語で公表された既往研究の概要を英語でとりまとめました。

Literature survey about biological control of insect pests and diseases of chili in Thailand

タイにおけるトウガラシの病害虫のうち、最も被害が深刻なのが吸汁性害虫のアザミウマと、細菌の一種(Ralstonia solanacearum)で起きる青枯病です。これらに加えてセンチュウ(Meloidogyne incognita)による被害が、タイにおけるトウガラシの減収の大きな原因になっています。

天敵を誘引する植物、さらに抵抗性品種を使用したトウガラシの病害虫対策が進められていますが、タイにおける取り組みは、まだ限られているようです。

Petcharat et al. (2007) と Petcharat (2010)は、生物的防除と農薬を使用する慣行防除の比較を実施しています。前者は、生物的防除のコストは慣行防除に比べ高いが、トウガラシの収量は、生物的防除の方が高かったことを報告しています。後者は、タイにおけるいくつかのトウガラシ生産地域を対象として、害虫と天敵の種類を調査しています。

Samoh (2013)は、トウガラシ害虫の天敵であるクサカゲロウ(Mallada basalis)に注目し、クサカゲロウを使った防除のコストは高いが、クサカゲロウを増殖するために混作されるキマメから、農家は副収入を期待できるとしています。Klangsinsirikul and Chupraphawan (2011)も、クサカゲロウや生物農薬を使った防除の効果を調べています。

その他の生物的防除として、Uraisakul (2003)は様々な植物から得られた抽出液の効果を、Thaveechai et al. (1999) と Watcharachaiyakup et al. (2005)は、抵抗性品種の効果を、Tangchitsomkid et al. (2009) と Chunram et al. (1991)は、トウガラシと他作物の輪作の効果をそれぞれ分析しています。