タイの作物圃場における天敵と害虫に関する既往研究

天敵は、農作物の害虫密度をコントロールする上でたいへん重要な役割を果たしています。ここでは、タイの作物圃場における天敵と害虫に関する研究の現況を紹介するため、主にタイ語で公表された既往研究の概要を英語でとりまとめました。対象とされた作物は、野菜類(トウガラシ、カウピー、カイラン、アスパラガス)、トウモロコシ、サトウキビ、イネなどです。

Literature review about pests and natural enemies observation in Thai crop fields

Seubsaiboonsong et al. (2006)は、有機農法で栽培されているトウガラシについて、品種の違いが天敵と害虫の密度に与える影響を調べています。その結果、アロマチック・チリと呼ばれる品種は、他品種に比べて害虫や天敵を誘引しやすく、その原因が明るい色の葉色であることを明らかにしました。Charernsom and Suasa-ard (1994)は、カウピー圃場の天敵相を調査し、カウピーの最も重要な害虫と天敵は、それぞれAphis craccivora Koch (アブラムシの一種)とMenochilus sexmaculatus (Fabricius)(テントウムシの一種)であるとしました。Pongprasert (2003)は、カイラン(Chinese kale)圃場において、生物農薬を用いた圃場で観察される昆虫の種類は、化学農薬を用いた圃場に比べて多様であり、主な害虫はコナガ類(Plutella xylostella (L.)) と ハムシ類(Phyllotreta sp.)であること、また、主な天敵はハリアリ類(Solenopsis geminata (F.)) と 寄生蜂(Cotesia plutellae (Kurdjumov))であることを報告しています。Phukthair (2005)は、アスパラガス圃場では、アザミウマ類とクモ類が主要な害虫と天敵であるとともに、豪雨が昆虫の生息密度を減らす要因であるしています。Boupha et al. (2006)は、7区のトウモロコシ試験圃場(対照区、化学農薬区、5種の生物防除区)の害虫と天敵を観察し、トウモロコシに深刻な被害を与える害虫はアワノメイガ類 (Ostrinia furnacalis)、オオタバコガ類 (Helicoverpa armigera)とアブラムシ類 (Rhopalosiphum maidis)であり、一方、よくみられる天敵はクモ類, ハサミムシ類(P. simulans), テントウムシ類(Menochilus sexmaculatus, Micraspis discolor) とクロアリ類 (Componotus sp.)であることを報告しています。Suasa-ard et al. (1990)は、Trichogramma chilotraeae(寄生蜂の一種)がサトウキビのメイガ類の天敵として重要だとしています。

その他、タイ各地で水田における害虫と天敵の観察が行われており、主な害虫はツマグロヨコバイ類 (Nephotettix spp.)、アザミウマ類 (Stenchaetothrips biformis (Bagnall))やコブノメイガ類(Cnaphalocrocis medinalis (Guenée))などである一方、天敵の種類は地域による差が大きいことが報告されています(Jumruskarn et al. (2014), Chupraphawan et al. (2008), Sorapongpaisal et al. (2011))。さらに、Suasa-ard (2010)は、サトウキビ、キャッサバ、トウモロコシ、ダイズ、ワタなどの重要な経済作物の害虫と天敵をまとめています。